専門家が支援するマインドフルネス認知療法は抑うつ症状の軽減に有効
提供元：AJ Advisers LLCヘルスデージャパン
軽度から中等度の抑うつに対しては、専門家が支援するセルフヘルプ式のマインドフルネス認知療法（以下、MBCT-SH）の方が、専門家が支援するセルフヘルプ式の認知行動療法（以下、CBT-SH））より、症状軽減の点でも費用対効果の点でも優れているとする研究結果が、「JAMA Psychiatry」に2023年3月22日掲載された1。
軽度から中等度の抑うつに対しては、CBT-SHが英国などの治療ガイドラインで推奨されているが2,3、ドロップアウト率が高い4という問題がある。英Sussex Partnership NHS Foundation TrustのClara Straussらは、軽度から中等度の抑うつを有する患者410人〔女性62.2％、年齢中央値32（四分位範囲25〜45）歳〕を対象に、抑うつ症状軽減効果および費用対効果について、MBCT-SHとCBT-SHを比較した。対象者は、MBCT-SH（204人）またはCBT-SH（206人）のいずれかを受ける群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。いずれの群にもMBCT-SHまたはCBT-SHに関するワークブックが配付され、訓練を受けた専門家による6回のサポートセッションも提供された。主要評価項目は、ランダム化から16週目でのPatient Health Questionnaire（PHQ-9）平均スコアとし、線形混合モデルを用いたITT解析によりMBCT-SH群とCBT-SH群でスコアを比較した。また、MBCT-SHとCBT-SHそれぞれが要する総費用（42週までの介入費用、医療費、薬剤費など）を算出し、質調整生存年（QALY）を指標に増分費用効果比を計算して両者の費用対効果を比較した。
ベースライン時のPHQ-9平均スコアは、MBCT-SH群14.50点、CBT-SH群14.90点であった。MBCT-SHでは204人中155人（76.0％）、CBT-SH群では206人中154人（74.8％）から、主要評価項目の検討に必要なデータが得られた。ランダム化後16週目でのPHQ-9平均スコアは、MBCT-SH群7.15点、CBT-SH群8.56点であり、MBCT-SH群ではCBT-SH群に比べて抑うつ症状が有意に軽減したことが明らかになった〔群間差−1.46ポイント、95％信頼区間（CI）−2.55〜−0.36、P＝0.009、Cohen’s d＝−0.36〕。
介入にかかる総費用の平均は、MBCT-SHが944ポンド（約171,808円）*、CBT-SHが1,571ポンド（約285,922円）であり、調整平均差は−526ポンド[約−95,732円]、95％CI −908〜−14ポンド[約−165,256円〜−2,548円] 、P＝0.007）とMBCT-SHの方が有意に低く、MBCT-SHは低いコストで良好な転帰を望めることが分かった。さらに、費用対効果受容曲線を推定したところ、英国立医療技術評価機構（NICE）が設定した、1 QALY当たりの支払意思額＝20,000〜30,000ポンド（約3,640,000円～5,460,000円]*）という条件下では、95％以上の確率でMBCT-SHが優れていた。安全性に関して、3件の重篤な有害事象がMBCT-SH群で報告されたが、いずれも介入とは無関係と判断された。
著者らは、「本研究で、軽度から中等度の抑うつを有する成人においては、新しい介入法であるMBCT-SHが、標準とされているCBT-SHよりも、症状軽減効果も費用対効果も大きいことが明らかになった。MBCT-SHが日常診療に取り入れられれば、抑うつ状態から回復する人が大きく増え、かつ医療サービスにかかる費用も抑制できるだろう」と述べている。（HealthDay News 2023年3月27日）
注釈
*2023年7月11日のレート：1ポンド＝182円換算の場合。
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