双極性障害における機能の維持:早期に治療し再発を予防する

カナダ・ブリティッシュコロンビア州、バンクーバーにあるUniversity of British ColumbiaのLakshmi Yatham教授は、バンクーバーで開催されたWFSBPのサテライトシンポジウムにおいて、双極性障害(BD)はアウトカムが不良な中枢神経系の進行性障害と考えるべきだ1と語りました

Yatham教授は、発症の周期が短くエピソード数も増加しているBD患者を対象とした多数の試験のデータ2-6を提示しました。 これらのデータから、BDは経時的に進行すると教授は考えています。BDの初回エピソードにおける脳領域の容積分析では、患者群と対照群の間に差はほぼ認められないことが明らかとなりました7しかし、BDのエピソードを複数回経験した1,500人超の患者群と健康な対照群約2,500人を対象とした大規模試験では、健康な対照群と比較してBD患者に海馬、扁桃体及び視床の容積の減少が認められる一方で、側脳室は拡大していました8さらに、認知機能障害はエピソードを重ねるごとに悪化しました1

疾患早期に治療を行うほど、反応、再発率、再発までの期間、症状の回復、寛解、心理社会的機能、及び雇用に関するアウトカムは良好でした

治療を疾患早期に行うほど、反応、再発率、再発までの期間、症状の回復、寛解、心理社会的機能、及び雇用に関するアウトカムは良好であり、この効果は薬物療法及び心理学的治療の両方で認められました9

では、私達はいつ治療を開始すべきなのでしょうか?早期介入とは、BD発症の高リスク患者を前駆期又は初回エピソードの時点で治療することを意味します。残念ながら高リスク患者への前駆期の介入に関するデータはほとんど存在せず10Yatham教授はより多くの研究が早急になされる必要があると語りました。

Yatham教授は、躁病の初回エピソードの時点で介入を行うことでアウトカムのある程度の改善が得られ、回復率は極めて高く(6ヵ月で91.3%[73/80]、1年で95.0%[76/80]及び18ヵ月で100%[80/80]、Kaplan–Meier法)11再発率についても多数のエピソードを経験した患者を下回る10 と結論付けています。再発が予防できれば、脳構造は保たれ12特に認知機能障害が回復する可能性がある13ことがデータから示されています。

米国ボストンにあるHarvard Medical SchoolのGary Sachs教授の講演では、「効果的な治療を行うためには臨床医が正しい診断を下す必要がある」ことに焦点が当てられました。

双極性障害の診断は困難であり、単極性うつ病と誤診されることがよくあります

BDの診断は困難であり、BDを単極性うつ病と誤診されることがよくあります。Sachs教授によると、急性躁病を受診理由として患者が医療機関を訪れることはまずないことがその理由の1つです。また、うつ病エピソード中に軽躁病や躁病を発見することはさらに困難です。診断を向上させる手段の1つは、5領域(徴候と症状、発症年齢、疾患の経過、治療反応性、及び家族歴)にわたるBDの基本的特徴を評価する、医師評価型スケールであるBipolarity Index14を利用することであると考えられます。

正しい診断が下されたら治療を開始すべきです。Sachs教授は、適切なサンプルサイズが設定された急性躁病の患者を対象としたプラセボ対照試験を基に、適切な治療について説明しました。これらの試験では、複数のドパミン拮抗薬及びドパミン部分作動薬が治療選択肢として多く使用されていました。同様に、このクラスの薬剤は維持期及び継続期の治療薬としても適切なものである、と教授は説明しました15

双極性障害患者の機能的パフォーマンスを維持するためには、特に躁病エピソードの再発予防が不可欠です

スペイン、バルセロナのUniversity of BarcelonaのIria Grande准教授は、BDには「機能障害」がよくみられ16,17疾患が進行するにつれ機能障害が進むことを示すエビデンスも存在する18と語りました。

Grande医師は、治療による症状の回復を考えるだけでなく、自律性を維持し、家族や友人との関係を保ち、学業や仕事に復帰/継続する能力を含む「機能」の回復を目指すことの必要性について語りました。機能は、機能評価簡略検査(Functioning Assessment Short Test、FAST)などの簡便なスケールを用いて評価することができます。Grande医師によると、FASTはインタビュー形式の使いやすいツールです19,20Grande医師は、BD患者の機能的パフォーマンスを維持するためには特に躁病エピソードの再発予防が不可欠である21ことを強調し、講演を締めくくりました。

このサテライトシンポジウムは、ルンドベック社(H. Lundbeck A/S)及びOtsuka Pharmaceutical Development and Commercialization, Inc.の資金提供を受けています。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Otsuka and Lundbeck.

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