うつ病及び統合失調症における新たな潜在的標的 ― 肥満及び運動から得られた知識

減量と運動はメンタルヘルスに対するベネフィットを増大させますが、その達成は困難です。得られた知識を実臨床の患者アウトカムの改善に結び付けようと私たちが模索する中、これらのベネフィットの根底にある生理学的変化から、薬物療法の新たな潜在的標的が示唆されています。

カナダ・トロント大学Mood Disorders PsychopharmacologyユニットのRoger McIntyre先生は、EPA 2019における介入の新たな標的についてのセッションの冒頭で、3つのアンメットニーズとして、認知パフォーマンスを含む日々の機能の不十分な回復、従来の抗うつ薬の効果発現の遅さ、および希死念慮や自殺行動といった重大な問題、を提示しました。

McIntyre先生によれば、モノアミンでおそらく私たちは行き着くところまで来ているのではないかとする一方、気分障害は、代謝機能障害、炎症、および老化の加速との興味深い関連が解明されつつあり、全く新しい治療法が示唆されています。

インスリンと肥満との興味深い関連

BMIが高値の人は脳神経の結合に変化が生じています。また、肥満の人では前頭前皮質のインスリン遺伝子及びドーパミン遺伝子の発現に変化がみられます。1,2

うつ病患者では炎症の有病率が増加する

インスリンは、内因性モノアミンオキシダーゼ阻害物質かつ脳の栄養因子であり、気分障害ではインスリン抵抗性が認められます。2型糖尿病を有する肥満の人では、認知機能が著しく損なわれています。3

うつ病患者では炎症の有病率が増加します。これには因果関係があるということではなく、関連があるということにすぎませんが、うつ病患者では、インターロイキン6などのサイトカインの値が高く、4炎症性サイトカインはうつ症状を誘発し、視床下部‐下垂体‐副腎系を活性化する可能性があります。

そのため、炎症と気分障害にも関連がある可能性があり、おそらくは、老化の加速やテロメア短縮とも関連があると考えられます。5

大うつ病性障害(MDD)及び双極性障害における認知機能障害には、インスリンシグナル伝達の障害が部分的に影響を及ぼしている可能性がある

この考えが正しいとすれば、高血糖や炎症の治療薬を気分障害の治療薬として使用できるかもしれません。この考えが実を結びつつあることを示す初期のエビデンスは存在しますが、すべての人に有効なわけではなく、患者のバイオタイプにより有効性が左右されると考えられます。

さらに、ドイツ・ミュンヘン大学のPsychiatry and Psychotherapy ClinicのPeter Falkai教授は、新たな標的という論題で統合失調症に焦点を移し、身体活動が海馬の神経発生、シナプスの可塑性の向上、学習の改善をもたらす可能性があるというエビデンスを提示しました。

Falkai教授は、「運動が答えだというわけではありません。しかし運動の効果は、より広範囲に活用できる病態生理を知る機会を与えてくれます」と述べています。

ドーパミンの先を見越して

運動の効果、特に海馬容積の増加は、異なるアプローチとしての新たな機会である

継続的な有酸素運動プログラムが統合失調症患者にもたらすベネフィットは、主に陰性症状と認知機能の改善であると考えられます。 運動によって、損なわれた可塑性が回復することで、ベネフィットがもたらされるようです。マウスでは、運動は水迷路でのパフォーマンスを向上させ、神経発生を促します。

患者での運動の効果を検討するため、Falkai教授らは、10年以上にわたり統合失調症に苦しむ患者20人を対象に研究を行いました。6週間の持続的な有酸素持久力トレーニング(週3回30分間にわたり自転車エルゴメーターを使用)と週2回のコンピュータを用いた認知機能リハビリテーションプログラムを併用した結果、全体の機能に20%の有意な改善が認められました(ANOVA、p=0.001)。6

陰性症状、認知パフォーマンス、社会/余暇活動及び家事関連機能の重症度にも、有意な改善が認められました  (いずれもANOVA、p<0.05)。

同様に認知機能リハビリテーションを受け、有酸素運動の代わりにテーブルフットボールを行った対照患者群では、認知機能へのベネフィットはみられたものの全体の機能の改善は認められませんでした。

抗精神病薬は、60~80%の患者の陽性症状の軽減に役立ち、多くの患者が良好な機能的アウトカムを達成します。既存の薬剤が十分に奏効しない20~40%の患者には、D2受容体遮断とは異なる作用機序を有する、少なくともこれを越えた治療が助けとなるものと考えられます。 

統合失調症は、神経可塑性が損なわれる障害と考えられる

興奮性と抑制性のシナプスの相互作用のバランスの乱れをリセットすることで、認知機能が改善し、陰性症状が緩和される可能性があります。

ニューレグリン1(NRG1)遺伝子の多型には、統合失調症のリスク増加との関連が認められています。Falkai教授らは、これはNRG1-ERBB4経路の過剰なシグナル伝達に起因していることから、潜在的な治療標的とみなすべきであるとの考えを示しています。7

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Chen VC et al. Brain structural networks and connectomes: the brain-obesity interface and its impact on mental health.Neuropsychiatr Dis Treat. 2018 Nov 26;14:3199-3208.       
  2. Mansur RB et al. Expression of dopamine signaling genes in the post-mortem brain of individuals with mental illnesses is moderated by body mass index and mediated by insulin signaling genes. J Psychiatr Res. 2018 Dec;107:128-135
  3. Mansur RB et al. Determinants of cognitive function in individuals with type 2 diabetes mellitus: A meta-analysis. Ann Clin Psychiatry. 2018 Feb;30(1):38-50
  4. Haapakoski R et al. Cumulative meta-analysis of interleukins 6 and 1β, tumour necrosis factor α and C-reactive protein in patients with major depressive disorder. Brain Behav Immun. 2015 Oct;49:206-15.
  5. Squassina A et al. Mood Disorders, Accelerated Aging, and Inflammation: Is the Link Hidden in Telomeres? Cells. 2019 Jan 15;8(1).
  6. Malchow B et al. Effects of Endurance Training Combined With Cognitive Remediation on Everyday Functioning, Symptoms, and Cognition in Multiepisode Schizophrenia Patients. Schizophr Bull. 2015 Jul;41(4):847-58.
  7. Wehr MC et al. Spironolactone is an antagonist of NRG1-ERBB4 signaling and schizophrenia-relevant endophenotypes in mice. EMBO Mol Med. 2017 Oct;9(10):1448-1462
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