気分障害の病態生理における炎症の役割とは?

APA 2019では、うつ病の病態生理及び治療抵抗性における、炎症及び炎症性メディエーターの役割を裏付けるエビデンスが紹介されました。これらの所見はうつ病の新たなバイオマーカーや新規治療の標的の同定につながるでしょうか?

うつ病の病態生理における炎症の役割とは?

テキサス州オースティンにあるUniversity of TexasのCharles Nemeroff教授は、「大うつ病性障害(MDD)、統合失調症及び双極性障害の多くのケースにおいて、重要な寄与因子である遺伝的脆弱性はどのようにして脳回路の変化に寄与するのでしょう?」と問いかけました。これは、これまでも今後も研究における根本的な疑問です。

遺伝的疾患感受性を理解することで予防の機会が得られる一方、分子マーカー及び画像検査のマーカーからは治療的介入の標的が得られます

教授は、「結局のところ、MDDや不安は、脳が環境にどう反応するかについての問題なのです」と語りました。遺伝子配列バリアントや遺伝子の多様なプロセシングが、細胞の分子経路に作用を及ぼしますが、その作用が情動の処理回路の活性に影響し、その結果が、行動や臨床上の表現型につながります。

Nemeroff教授は、「遺伝的疾患感受性を理解することで予防の機会が得られる一方、分子マーカー及び画像検査のマーカーからは臨床症状が発現する前の治療的介入の標的が得られます」と付け加えました。

I炎症は大うつ病性障害のバイオマーカーか?

サイトカインの活性化はうつ病様症状を引き起こします

Nemeroff教授は、「炎症及び自然免疫応答の活性化は、心血管疾患やがんなどの多くの身体疾患と同様、MDDの病態生理にも役割を果たすと考えられます」と説明しました。その理由は、MDD患者では次の状態が認められるからです。

  • 末梢血及び脳脊髄液の自然免疫系サイトカイン(インターロイキン[IL]6及び腫瘍壊死因子[TNF]α)が増加する
  • 急性期反応物質(C反応性蛋白[CRP])が増加する
  • ケモカインが増加する
  • 細胞接着分子が増加する

これらの炎症性マーカーは、抗うつ療法が奏効すれば減少します。しかし、インフルエンザ様疾患などによるサイトカインの活性化は、快楽消失、倦怠感、過眠、食欲不振、引きこもり、集中力低下、痛覚過敏、及び虚弱といったうつ病様症状を引き起こします。

MDDにおける炎症の役割は、CRPやIL-6とMDDとの関連を示す系統的レビューや解析によってさらに裏付けられています。1 系統的レビューにおいては、炎症性サイトカインと自殺行為との関連が明らかとなり2 、またある研究では、MDD患者は炎症性腸疾患のリスクが高く、このリスクは抗うつ薬の使用により軽減されることが示されています(COXハザード比例モデル。うつ病患者の一般対照集団に対するクローン病発症ハザード比(95%信頼区間):SSRI使用で0.63(0.50-0.78)、TCA使用で0.77(0.61- 0.97)。潰瘍性大腸炎発症のハザード比(95%信頼区間):ミルタザピン使用で0.34(0.15-0.77)、SNRI使用で0.46(0.25-0.83)、SSRI使用で0.48(0.42-0.55)、セロトニン・モジュレーターで0.46(0.23-0.92)、TCA使用で0.59(0.51 - 0.68))3

脳における炎症性サイトカインの作用

炎症性サイトカインがうつ病や抑うつ症状において役割を果たす可能性はあるのでしょうか?

Nemeroff教授は、うつ病及び抑うつ症状における炎症性サイトカインの役割の可能性について述べた際、以下の点を強調しました。

  • 末梢で放出されたサイトカインの脳への侵入: 血液脳関門の高透過性領域、能動輸送、及び求心性神経線維(迷走神経)による伝達を介して侵入する
  • 中枢神経系のサイトカインネットワーク: ミクログリアとニューロンにより構成され、サイトカインを発現/産生し、サイトカイン受容体を発現する
  • サイトカインが及ぼす影響: 神経伝達物質のターンオーバー、神経内分泌の機能及び行動に対する影響r

Nemeroff教授は「最近発表された論文により、未治療のうつ病患者で認められる炎症経路の異常が、治療反応の不良につながっていることが明らかとなりました」と付け加えました。抗炎症性サイトカインの濃度の増加は治療へのレスポンダーと非レスポンダーの両方で認められましたが、これとは対照的に、5つの炎症性サイトカインの濃度はレスポンダーでは安定していたのに対し、非レスポンダーでは増加し続けました。著者らは、MDD患者には炎症システム全体のリモデリングが認められると結論付けました。4  

Nemeroff教授が引用した最近のもう一つの研究でも、治療抵抗性MDDにおける炎症性サイトカインの役割が裏付けられています。この研究では、治療失敗の件数とTNF、可溶性TNF受容体2(sTNF-R2)、及びIL-6との間に有意な関連(多変量分散分析及び事後検定、いずれもp<0.05)が認められました。5

参考文献
  1. Valkanova V, et al. J Affect Disord. 2013;150(3):736–44.
  2. Serafina G, et al. Eur Neuropsychopharmacol 2013;23:1672–86.
  3. Frolkis A, et al. Gut. 2018. doi: 10.1136/gutjnl-2018-317182.
  4. Syed S, et al. Neuron. 2018;99(5):914–24.
  5. Haroon E, et al. Psychoneuroendocrinology. 2018;95:43–9.
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