治療の重要なアウトカム – 抗うつ薬への反応が不十分な大うつ病性障害患者に対する既存の治療及び新たな治療

大うつ病性障害(MDD)が社会に与える負担は多大であり、2030年までに障害負担の大きな原因となることが予想されています。1うつ病を即座に認識し速やかに治療を開始することが、臨床経過の悪化を回避する上で重要です。MDDにおける早期の改善がみられないことが、治療反応又は寛解を得られないことを予測するかもしれません。

カナダのバンクーバーにあるUniversity of British ColumbiaのDiane McIntosh助教授は、ルンドベック社(H. Lundbeck A/S)及びOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.の共催によりバンクーバーで開催されたWFSBPのサテライトシンポジウムにおいて、「うつ病の長期化は、患者のアウトカムに負の影響を及ぼします。長期のうつ病は、回復の可能性の低下、併存疾患の増加、再発及び機能障害のリスク増加と関連しています」2-6 と語りました。

多くの患者は推奨される期間以上に長く不適切な治療を受け続けており、そのために失望感を抱かせたり、医師と患者の関係を損なったりする可能性があります。7,8 

多くの患者が推奨される期間以上に長く不適切な治療を受け続けており、そのために失望感を抱かせたり、医師と患者の関係を損なったりする可能性があります。

McIntosh助教授は患者調査の結果に焦点を当てました。患者の回答から、薬剤に対する失望感の主な原因は治療効果を感じられないことと副作用が出現することであり、その結果、患者が治療方法や医療提供者を疑問視するようになったり、最終的に治療コンプライアンスに影響が及んだりする可能性があると説明しました。9

患者が意思決定に関与した場合、より良い決定が下され、健康及び健康関連のアウトカムが改善し、資源が有効に配分されることがエビデンスから示されています。共有意思決定shared decision makingのプロセスは2段階の話し合いで構成され、第一に、(利用可能な選択肢についての)希望について初めに相談するステージ、次いで患者と医師が合同で決定を下す意思決定のステージです。10

カナダのアルバータ州にあるUniversity of CalgaryのZahinoor Ismail准教授は、MDDの治療目標が病気の段階によって変化することを示すデータ11-13を提示しました。さらに、患者は往々にして、自身が受けている治療を、自身にとって意味のある個人的な治療目標の観点から考えます。こうした治療目標は、患者自身の社会生活や家庭生活、身体の健康、雇用状況、又は居住形態と関係するものです。14

十分な数の様々なクラスの抗うつ薬が利用可能であるにもかかわらず、適切な反応や寛解が得られないことはよくあります。

抗うつ薬の安全性と忍容性は改善されたものの、抗うつ薬療法への全体の反応率は過去30年間で改善しておらず、十分な数の様々なクラスの抗うつ薬が利用可能であるにもかかわらず、多くの患者が適切な反応や寛解を得られずにいます。15,16 さらに、寛解期や回復期にある患者であっても、疲労や睡眠/覚醒の障害や認知機能障害といった機能障害の症状が持続することがあり17、治療への反応が不十分な患者は社会生活において重大な障害を経験します。Ismail准教授は講演の締めくくりとして、MDDには依然としてさらなる治療薬のニーズがあると結論付けました。18

McIntosh准教授は、米国ニューヨーク州バルハラにあるNew York Medical CollegeのLeslie Citrome教授に代わり、抗うつ薬への不十分な反応に対処する既存の治療薬及び新たに利用可能な治療薬について概説しました。 

うつ病の神経生物学的基盤は、これまで抗うつ薬の主要な標的であったモノアミン作動性回路の枠を超えている可能性があります。MDD患者には寛解期にもかかわらず症状が持続又は残存することがよくあり、このような患者では自殺や再発のリスクが高く、心理社会的及び職業的な機能への有害作用がみられます。19-21

グルタミン酸作動薬は抗うつ作用の開始が速やかであり、MDDの治療薬として有望であることが示されています。医療機関で投与されるNMDA受容体拮抗薬のエナンチオマー(光学異性体)の点鼻スプレーは、治療抵抗性のうつ病を適応症として米国で初めて承認された非モノアミン作動性治療薬です(注:2019年11月現在、本邦未承認薬)。

NMDA受容体拮抗薬の作用機序はオピオイド系とも関与する可能性があります。ただし、µオピオイド受容体の部分活性化作用と、µオピオイド拮抗作用を有するκオピオイド受容体拮抗薬を組み合わせるなどしたオピオイド薬がMDDの治療薬として検討されていますが、これまでのところ効果は証明されていません。グリシンの部分アゴニストとして作用するNMDA受容体モジュレーターも同様であり、最近の第III相試験で失敗に終わっています。

GABA作動薬についても調査が行われており、GABA-A受容体に対するポジティブ・アロステリック・モジュレーター(PAM)作用を有する点滴薬が産後うつ病に対し承認されています(注:2019年11月現在、本邦未承認薬)。

現在、MDDの管理への使用が承認されている経口補助薬は、ドパミンD2受容体への拮抗作用又は部分アゴニスト作用を有する非定型抗精神病薬のクラスの薬剤だけです*。

McIntosh准教授は、「現在、MDDの管理への使用が承認されている経口補助薬は、ドパミンD2受容体への拮抗作用又は部分アゴニスト作用を有する非定型抗精神病薬のクラスの薬剤だけです。*」と語り、講演を締めくくりました。

米国カリフォルニア州コスタメサにあるATP Clinical ResearchのGustavo Alva教授も同じ見解を示しており、NMDA受容体拮抗薬のエナンチオマーやGABA-A受容体PAMなどの開発プログラムに関するデータの考察を示したほか、D2受容体部分アゴニストによる補助療法に関する臨床試験の短期及び長期の安全性及び有効性のデータを提示し、MDD治療におけるその位置付けを強調しました。

* 本邦では、ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を有する薬剤が「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る) 」 を適応症として承認されている。

 

このサテライトシンポジウムは、ルンドベック社(H. Lundbeck A/S)及びOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.の資金提供を受けています。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Otsuka and Lundbeck.

参考文献

 

  1. World Health Organization (WHO). Global burden of mental disorders and the need for a comprehensive, coordinated response from health and social sectors at the country level. 2011.
  2. McIntyre RS et al. Can J Psychiatry 2004;49(suppl 1):10S–16S
  3. Lin E et al. Arch Fam Med 1998;7:443–449
  4. Keller M et al. Arch Gen Psychiatry 1992;49:809–816
  5. Tranter R et al. J Psychiatry Neurosci 2002;27:241–247
  6. Druss B et al. Am J Psychiatry 2001;158:731–734
  7. Marcus S et al. Psychiatric Services 2009;60:617–623
  8. Moller HJ et al. Medicographia 2010;32:139–144
  9. Mago R et al. BMC Psychiatry 2018;18:33.
  10. Elwyn et al. J Gen Intern Med 2012;27:1361–1367
  11. Kupfer DJ. J Clin Psychiatry 1991;52(suppl):28–34
  12. American Psychiatric Association. Practice Guideline for the Treatment of Patients With Major Depressive Disorder. 3rd ed. Arlington, VA: American Psychiatric Association; 2010
  13. Bauer M et al. World J Biol Psychiatry 2013;14: 334–385
  14. Battle CL et al. J Psychiatr Pract 2010;16:425–430
  15. Papakostas GI & Fava M. Eur Neuropsychopharmacol 2009;19:34–40
  16. Han C et al. Expert Rev Neurother 2013;13:851–870
  17. Conradi HJ et al. Depress Anxiety. 2012;29:638–645
  18. Trivedi M et al. Int Clin Psychopharmacol 2009;24:133–138
  19. Nierenberg AA et al. Psychol Med. 2010;40:41-50.
  20. Blier P. J Clin Psychiatry. 2013;74(Suppl 2):19-24.
  21. Romera I et al. BMC Psychiatry. 2013;13:51.
Progress in Mind次のウェブサイトに移動します
Hello
Please confirm your email
We have just sent you an email, with a confirmation link.
Before you can gain full access - you need to confirm your email.
このサイトの情報は、医療関係者のみを対象に提供されています。
Congress
Register for access to Progress in Mind in your country