バイオマーカー ― 精神医学における診断の未来は?

現在、精神疾患の診断は臨床での判断に依存しています。今後は、適切なバイオマーカーが同定され、患者のアウトカムの改善をもたらす早期診断と早期治療が可能となることが期待されます。統合失調症では、疾患の重症度を軽減し経過を改善するためにバイオマーカーは極めて重要です。EPA2019では、この最先端の興味深いテーマに関するシンポジウムは精神科医の聴衆で満員となり、その満員の聴衆に向けて、精神医学における潜在的バイオマーカーの同定に関する最新の研究が発表されました。

ポーランドのワルシャワ医科大学のA Szulc教授は、バイオマーカーは「客観的に測定でき、正常な生物学的プロセス、病理学的プロセス、又は介入への薬理学的反応の指標として評価される特性」1であると説明しました。

 

免疫システム関連の潜在的バイオマーカー

脳の無菌性炎症は高頻度にみられ、精神疾患の原因となり得ます

ポーランドのワルシャワ医科大学及び米国ケンタッキー州ルイビルのジェームス・ブラウンがんセンターのMariusz Ratajczak教授は、「精神疾患はストレス、環境因子及び遺伝因子が組み合わさった結果発症する」と語りました。

教授は、精神疾患を有する患者には炎症関連の異常が高頻度にみられると説明しました。その異常には以下が含まれます。

  • 血中の炎症性サイトカイン値及びケモカイン値の増加
  • 血中の単球数及び好中球数の増加
  • 炎症性シグナルに対する小膠細胞、アストロサイト、及び内皮細胞の応答の亢進2

重度のうつ病も慢性の炎症性疾患に併発することが多く、また炎症性疾患をすでに有している患者は健常者より気分障害を発現しやすくなります。

Ratajczak教授は、これらの所見は、抗原非特異的な免疫初期反応としての自然免疫系と、微生物など特異抗原に対する抗原特異的な免疫応答としての獲得免疫系とのクロストークを示しており、このことは免疫系の共進化によって一部説明がつくと話しました2。自然免疫の活性化により生じる脳の無菌性炎症は、微生物感染ではなく、物理的、化学的又は代謝性の損傷によって引き起こされる発現頻度の高い事象であり、精神疾患の原因の1つであることを教授は示唆しました。補体カスケードの分解産物(C3a及びC5a)は、脳の無菌性炎症の新規マーカーであると教授は付け加えました。

「自然免疫の活性化により生じる脳の無菌性炎症は、微生物感染ではなく、物理的、化学的又は代謝性の損傷によって引き起こされる発現頻度の高い事象であり、精神疾患の原因の1つである」Ratajczak教授

Ratajczak教授はまた、脳内の細胞性免疫を拡大させる小膠細胞(脳内の全ての細胞のうち10~15%を占める)の役割を強調しました。脳の維持における重要な細胞である小膠細胞は、わずかな病理変化に対しても極めて高い感受性を有します。

病理プロセスにおけるその他の重要な因子には、無菌性炎症でのATPを介した異常なプリン作動性シグナル伝達によるdanger-associated molecular pattern molecule(DAMP)の放出の変化、補体及び凝固カスケードの活性化などがあります。対照的に、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)による炎症抑制作用は炎症プロセスに有益な影響を及ぼします2

 

脳形態に関する個人ベースの類似性インデックス

ニューヨークのマウントサイナイ・アイカーン医科大学のSophia Frangou教授は、「精神疾患の不均一性は診断と治療に多くの課題をもたらしますが、正確な、あるいは個別化された精神医学を可能にするためには患者を層別化する必要があります」と語りました。

Frangou教授とそのチームは、統合失調症患者の層別化を試みるため、個人ベースの類似性インデックス(PBSI)を用いました。PBSIは、個人の脳構造プロファイルであり、全ての形態的指標を含む単一ベクターとしての特性を有しています3。これによって以下が明らかとなりました。

  • 全体的脳構造の変動性の指標から、患者の不均一性は皮質領域にあることが示唆された。
  • 脳局所構造の変動性の指標から、中前頭回は遂行機能及び認知制御に関与し、中側頭回は言葉の処理及び記憶に関与することが示唆された。

 

遺伝マーカーは有用ではないようである

ポーランドのシュチェチンにあるポメラニアン医科大学のJerzy Samochowiec教授は、「DSMの診断は不均一な臨床的記述を包含するもので、まだ生物学的データに従った指針ではありません」と語りました。教授は精神疾患の複雑な遺伝的性質について述べ、多くの遺伝子のリスクに対する影響はわずかであると考えられるため、単一の遺伝的バリアントが診断に有用であるとは考えられないことを示唆しました。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Biomarkers Definitions Working Group. Clin Pharm Ther 2001
  2. Ratajczak M, et al. Front Psych 2018
  3. Doucet G, et al. Cerebral Cortex 2019
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