ボディスワッピングの臨床使用! 心配ご無用!バーチャル・リアリティのことです。

デジタル技術は多くの医師にとって耳慣れないものですが、精神医学を含む多くの医学領域で、デジタル技術の導入が大いに必要とされています。EPA 2019で開催された、アバター、バーチャル・リアリティ及び治療由来のアルゴリズムに関するEPA/ECNP合同シンポジウムでは、デジタル技術は近い将来、精神科の診療を間違いなく変化させることが明らかとなりました。

子供の眼を通してコンパッションを理解する

英国のロンドンにあるUCL Division of Psychology and Language SciencesのChris Brewin教授は、うつ病患者が自己批判の強さとセルフ・コンパッション(自分を慈しむ心)の弱さを克服する際の助けとするためのアバター(仮想の人)の使用について紹介しました。Brewin教授の発表では、自己批判の強い女性患者43人がアバターの役割を演じ、動揺しているアバターの子供を慰めるよう依頼されました。子供は患者のアバターに応え、患者が示したコンパッションにより安心しました。その後、患者に子供のアバターの役割を演じさせ、自分が行った慰めの介入を子供の視点から見て聞くことができるようにしました。

セルフ・コンパッション及び自己批判の変化を評価するために特別に開発された評価尺度により、アバターを演じたたった一度の経験が、患者の自己判定の厳しさを変化させる上で役立ったことが明らかとなりました。反復的なアバター療法は、この結果を強化する上で有用でした。

たった一度のアバターを介したセルフ・コンパッションの経験は、うつ病患者が自己判定の厳しさを変化させる上で役立ちました

興味深いことに、患者は他者に対しコンパッションを表現することに恐れを抱きませんでした。実生活において、患者はセルフ・コンパッションを表す能力が未だに正常範囲外であったにもかかわらず、他者へは自発的にコンパッションを示していました。アバターを用いた練習により、セルフ・コンパッションへの恐れは改善していきました。

 

患者は自分の声を聞くことを嫌がります

興味深いことに、患者は、アバターの子供の役割を演じて慰められている時に聞こえてくる自分自身の声を嫌がりました。しかしBrewin教授は、自分自身の声を心地よく感じられるようになることがこの治療の不可欠な部分であろうと述べています。それは、患者が、こうしたバーチャル・リアリティ・プログラムの利用が、現実に自分が恐れているあるいは切望している状況を経験する手段であると気付くということかもしれません。

 

うつ病患者は異なる物事の見方をします。

英国のオックスフォード大学精神科P1vital LTDのGerard Dawson先生が述べたように、機械学習のアルゴリズムは、抗うつ薬を処方する際にも役立つことが立証されるかもしれません。患者が抗うつ薬治療からベネフィットを得るかどうかわかるには、4~6週間かかることがあります。しかし、うつ病患者は、うつ病でない対照者とは異なる感情の処理の仕方をすることが研究で示されています。対照者が幸せそうな表情だと見てとる場合に、うつ病患者は根底にある悲哀を読み取ることがあります。特に、顔に感情がすべて表れていないと感じられた場合は、その傾向が強くなります。 しかし抗うつ薬は、うつ病患者が感じるこうした否定的な感情バイアスに、治療開始後きわめて速やかに変化をもたらします。否定的なバイアスの変化、そして感情処理の変化をモニタリングすることが、治療が有効かどうかを予測するためのより迅速な手段となり得るかもしれないことが示唆されています。

感情処理の変化をモニタリングすることは、抗うつ薬による治療が有効かどうかを予測するためのより迅速な手段となり得るかもしれません

感情処理の変化と簡易抑うつ症状尺度(QIDS: Quick Inventory of Depressive Symptomatology)質問票の情報を組み合わせた機械学習由来のアルゴリズムが開発され、アプリに組み入れられました。患者はこのアプリを使い、担当医に記入済みの質問票を定期的に返送して評価を受けることができました。

一般医(GP: general practitioners)のクリニック10施設から組み入れた患者58人に関する概念実証(POC: proof of concept)試験では、抗うつ薬治療が奏効しない患者が75%の精度で予測されました。では、担当患者の否定的バイアスの変化をGPが知ることは、抗うつ薬治療の(長期の待機ではなく)早期の切り替えと、より良いアウトカムの達成を促進するのでしょうか?

 

PReDicT試験 ― GPは得られた情報に基づいて行動するのでしょうか?

その真相を明らかにするため、900人の患者を対象として無作為化対照試験であるPReDicT(Predicting Response to Depression Treatment)試験が実施されました。この試験では、通常の治療を受けた患者と、1週間の抗うつ薬治療後に否定的な感情バイアスがモニタリングされた患者とが比較されました。GPが観察された感情バイアスの変化に基づき、自分の裁量で治療を変更するか否かを選択できたことは注目に値します。この技術の費用対効果と患者の受容性も評価されました。

試験の結果は、PReDicT群のGPに実際に早期の行動の変化が生じ、その結果患者のアウトカムが改善したことを示唆しています。 しかし、このアルゴリズムによって患者が現在の抗うつ薬治療でベネフィットを得ていないことが示唆された症例の50%以上では、臨床医は薬剤の切り替えを行わず、予測を無視する選択をしたことに注意しなければなりません。さらに、POC試験では抗うつ薬が1剤のみ使用されていたため(PReDicT試験では、患者は多様な治療を受けていました)、このアルゴリズムは薬剤への肯定的な反応を過剰に予測していました。両方の要因により、PReDicT試験における患者のベネフィットは、これらの要因がなければ得られたであろうベネフィットを下回りました。

このアルゴリズムによって患者が現在の抗うつ薬治療からベネフィットを得ないことが示唆された症例の50%以上で、臨床医は予測を無視する選択をしました

 

正確な患者の報告及びテクノロジーに対する良好な受け入れ

質問票による患者の自己報告が臨床医の報告と同様に正確であることは明らかであり、8週間の試験期間にわたるコンプライアンスは良好でした。患者はこのテクノロジーを尊重しており、臨床医は自分の試験の結果をモニタリングし、何か問題がある場合は対照群の患者に対してでも介入してくれると信じていました。Dawson医師は、うつ病患者が本当に治りたいと思っていることは明らかだと結論付けました。

患者はこのテクノロジーを尊重しており、臨床医は自分の試験の結果をモニタリングし、何か問題がある場合は介入してくれると信じていました

ドイツのマンハイムにあるCentral Institute of Mental HealthのAndreas Meyer-Lindenberg教授は、機械学習及びディープラーニングの方法について発表(アルゴリズムや人工ニューラルネットワークに関する自身の発表に焦点をあてたもの)を行いました。後述の3つの発見によって適用範囲が急激に広がったため、システムは単層のニューラルネットワーク(パーセプトロン)から大きく進歩しています。

 

ニューラルネットワークの隠れた層

人工ニューラルネットワークは、作動するためには多層である必要があり、最大の入出力を有するディープ・ニューラルネットワークには多くの隠れた層があります。情報がネットワークにフィードバックされると、こうした再帰型ネットワークでは出入力がさらに高まります。出力を予測する際の誤差逆伝播により、ネットワークを鍛錬されたものとすることができます。第3に、グラフィックプロセッサの形態の効率的なハードウェアを使用することによって、機器を効果的な多機能ツールとすることができます1

ネットワークを鍛えるためには、多くのデータ、すなわちビッグデータが必要です。そして精神医学にビッグデータが不足しているわけではありません。実際には、収集されるデータ量は急速に増加しています。しかし、今日ハードウェアは最大容量で機能しており、多くの組織は従来のコンピュータアーキテクチャに代わるものを求めています。

例えば、画像検査と遺伝データを扱うネットワークを統合することによって、有用な表現型が明らかとなる可能性があります。同様に、患者を同定し分類を決めるために利用可能なデータを、スマートフォンで収集できるかもしれません。基本的には、精神科診療という領域について考えた場合、人工ニューラルネットワークは将来の更なる研究に役立つことでしょう。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Durstewitz D, Koppe G, Meyer-Lindenberg A. Deep neural netwroks in psychiatry. Mol Psychiatry. 2019 Feb 15
Progress in Mind次のウェブサイトに移動します
Hello
Please confirm your email
We have just sent you an email, with a confirmation link.
Before you can gain full access - you need to confirm your email.
このサイトの情報は、医療関係者のみを対象に提供されています。
Congress
Register for access to Progress in Mind in your country