グラフ畳み込みニューラルネットワークにより統合失調症の分類が個人レベルで可能

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

グラフ畳み込みニューラルネットワーク(Graph Convolutional Networks;GCN)を用いることで、統合失調症の分類を個人レベルで高精度に行うことができるという研究結果を、四川大学(中国)のDu Leiらが、「Schizophrenia Bulletin」に2022年5月15日発表した1

Leiらは、5施設より入手した6つのデータセットに含まれる統合失調症患者505人と対照907人の安静時機能的MRI(rs-fMRI)を用い、脳機能ネットワークのトポロジー異常に基づく統合失調症の分類能をGCNとサポートベクターマシン(Support Vector Machine ;SVM) とで比較検討した。脳全体を90個の解剖学的な部位に分割した上で、全てのペアを作ってPearson相関係数の値を求め、この結果から機能的な結合に関する行列を作成した。この行列からnode(節点)とedge(線)から成るグラフを作成し、これについて畳み込みを行った。また、Class activation mapping(CAM)を用いて判別・分類に最も寄与する領域を10カ所抽出した。これらの領域が、脳内の機能的ネットワークの中でどのような位置を占めているのか、どのように接続しているのかを、それぞれの領域の節点効率(nodal efficiency)などの値を算出することにより評価し、それらの値と統合失調症の症状の重症度との相関関係を検討した。

10分割交差検証で評価したaccuracyの平均値は、GCNで85.8%〔95%信頼区間(CI)84.9-86.7%〕、SVMで80.9%(同79.9-81.9%)、ROC曲線下面積(AUC)はGCNで0.926(同0.919-0.933)、SVMで0.897(同0.889-0.905)であり、GCNの分類能はSVMを上回ることが示された。GCNモデルの分類のための上位10カ所の領域は、主に線条体領域(被殻、淡蒼球、尾状核)、扁桃体、内側上前頭回などの皮質下領域と前頭領域に位置していた(詳細データは、参考文献1のSupplementary table S1およびfigure 2参照)。これに対して、SVMモデルでは、上位10カ所の領域は、側頭回、角回、背外側前頭前野、眼窩前頭皮質を含む広範な皮質領域であった(詳細データは、参考文献1のSupplementary table S1参照)。

上位10カ所の領域に関するPearsonの相関分析では、GCNモデルでのみ、両側の被殻および淡蒼球の節点効率と統合失調症の陰性症状の重症度との間に有意な関連が示された(右被殻:r=−0.136、P=0.007、左被殻:r=−0.119、P=0.019、右淡蒼球:r=−0.119、P=0.019、左淡蒼球:r=−0.121、P=0.017)。

著者らは「この研究により、CGNを使うと、統合失調症であるか否かを個人レベルでよく判別できる可能性が示された。さらに、線条体領域および扁桃体と統合失調症の陰性症状との間に多くの負の関連が認められた。統合失調症患者が陰性症状を呈する際には、神経系の主要な障害として、被殻と淡蒼球を含む線条体領域での脳内の機能的ネットワークの接続に不具合が生じているものと思われる」と述べている。

なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年6月20日)

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※本記事の参考文献1の論文において、著者の1人がLundbeckを含む複数の製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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参考文献

  1. Lei D, et al. Schizophrenia Bulletin 2022 June 21;48(4):881-892.