自閉症スペクトラム障害(ASD)特有の脳構造の特徴が症状に関連すると判明



提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

自閉症スペクトラム障害(ASD)の患者では、定型発達者とは異なる脳構造の特徴が見られ、それが症状と関連するという研究結果が、「Science」に2022年6月3日掲載された1。米ボストン大学のAidas Aglinskasらが機械学習モデルを用いて脳の核磁気共鳴画像(MRI)を分析し、分かった。

脳の構造は、ASDとは無関係のさまざまな遺伝要因や環境要因に影響される2。また、撮影する場合、MRI装置の違いにも影響される3。ASDの症状の個人差と脳構造の特徴を結び付けて体系的な分析をする際は、こうした要因が障壁になっているとAglinskasらは考え、本研究ではASD群と定型発達群との間で脳MRI画像を比較することで、ASDに起因すると思われる脳構造の特徴を抽出し、それと各要因との関連を調べることとした。

この研究では、Autism Brain Imaging Data Exchange I(ABIDE I)に登録されたASD群470人、定型発達の対照群512人の脳MRI画像を対象とした。まず、対照変分オートエンコーダ(CVAE)という機械学習モデルを用いて、ASDにも定型発達者にも共通して見られる構造と、ASDのみに見られる構造を抽出。次に、表現類似性分析(RSA)により、対象者のペアを作り、ペア間で脳構造の一致度を計算した。同様の手法で、MRI装置の種類、年齢、Vineland適応行動尺度、自閉症診断観察尺度(ADOS)などのさまざまな要因についてもペア間での一致度を計算した。これをもとに、両群で共通する特徴、ASD特有の特徴の一致度と、各要因の一致度との間の相関係数をそれぞれ求めた(Kendallのτ)。

その結果、両群に共通する特徴は非臨床的要因との相関が強く、ASD特有の特徴は臨床的要因との相関が強かった。例えば、非臨床的要因であるMRI装置の種類は、両群共通の脳構造の特徴との相関は強かったが、ASD特有の特徴とは相関しておらず、両特徴の間で相関係数に差が認められた(Δτ=0.12、t9=124.83、p<0.001)。一方、臨床的要因は、ASD特有の特徴と強く相関した〔精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)-IVのサブタイプではΔτ=0.04、t9=20.04, p<0.001、ADOS合計点ではΔτ=0.01、t9=11.59、p<0.001、Vineland適応行動尺度ではΔτ=0.05、t9=10.46、p<0.001〕。

さらに、ASDと定型発達者とで脳構造に異なる影響を及ぼすとされる年齢、性、全検査知能指数(FIQ)は、両群共通の特徴ともASD特有の特徴ともよく相関していた(両群共通の特徴では年齢:τ=0.08、t9=89.29、p<0.001、性別:τ=0.05, t9=35.34、p<0.001、FIQ:τ=0.01、t9=15.57、p<0.001、ASD特有の特徴では年齢:τ=0.05、t9=48.60、p<0.001、性別:τ=0.02、t9=8.13、p<0.001、FIQ:τ=0.02、t9=20.22、p<0.001)。ただし、年齢と性では両群共通の特徴との相関が強く(年齢ではΔτ=0.03、t9=24.11、p<0.001、性ではΔτ=0.03、t9=11.90、p<0.001)、FIQではASD特有の特徴との相関が強かった(Δτ=0.01、t9=12.86、p<0.001)。こうした結果から、今回の機械学習モデルはASD特有の脳構造の特徴を分離でき、さらにその特徴は、臨床的要因と非臨床的要因の間で異なる関連性を示すことが明らかになった。

この機械学習モデルの汎用性を検討するために、Simons Foundation Autism Research Initiative(SFARI)Variation in Individuals Project(VIP)の参加者121人のデータセットを同モデルで分析した。その結果、再トレーニングや転移学習をしなくても、同モデルにより抽出されたASD特有の脳構造の特徴は、遺伝子型を含むASDに関連する要因と関連することが明らかになった。

なお、同モデルで特定されたASD特有の脳構造の特徴は、サブタイプとして分類できるのか、それとも連続的な多様性として捉えるべきなのかを検討するためのクラスタ分析も実施した。その結果、ASD特有の脳構造の特徴は、100%の対象者で単一のクラスタを示しており(p<0.01、参考文献1 Figure 1D参照)、少なくとも神経構造学的には、ASD特有の脳構造の特徴は、個別のサブタイプではなく、連続的な多様性として捉えた方がよいことが示された。

同氏らは、「ASD群と定型発達群とで共有して見られる脳構造の特徴と、ASD群に特有の脳構造の特徴を分離することができた。今回の機械学習モデルは、再トレーニングをしなくても他のデータセットに適用できたため、過去の症例で学習したモデルを用いて、新たなASD患者の診断などの場面でも応用できる可能性がある」と述べている。(編集協力HealthDay)

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参考文献
  1. Aglinskas A, et al. Science. 2022 Jun 3;376(6597):1070-1074.
  2. Gu J, et al. Front Hum Neurosci. 2014 April 28; 8: 262.
  3. Auzias G, et al. IEEE J Biomed Health Inform. 2016 20: 810-817.
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