COVID-19急性期後早期の段階では精神疾患の新規発症リスクが増加

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、急性期後早期の段階(感染から21〜120日後)に精神疾患や不安障害の新規発症リスクが約1.3倍となることが、米Jackson Laboratory for Genomic MedicineのBen Colemanらにより、「World Psychiatry」2022年6月号に発表されたletter to the editor1で明らかにされた。

National COVID Cohort Collaborative(N3C)は、電子健康記録(HER)からCOVID-19の症状や患者の転帰に関する臨床データを収集している米国のデータベースである。今回の研究では、N3Cの2021年10月20日までのデータを用いて、COVID-19罹患後の精神疾患の新規発症リスクを検討した。N3Cのデータには、COVID-19患者1,834,913人とCOVID-19以外の呼吸器感染症(RTI)の診断を受けた対照群5,006,352人が含まれていた。この中から傾向スコアマッチング法によりCOVID-19群と対照群をそれぞれ46,610人ずつ選び出し、Cox回帰分析により、COVID-19やRTI診断から21〜365日間でのあらゆる精神疾患、不安障害および気分障害の新規発症リスクを比較した。

その結果、急性期後早期(診断後21〜120日)に精神疾患を新規発症した患者の推定罹患率は、COVID-19群で3.8%〔95%信頼区間(CI)3.6-4.0〕であるのに対し、対照群では3.0%(同2.8-3.2)であり、リスクはCOVID-19群の方が有意に高いことが明らかになった〔ハザード比(HR)1.3、95%CI 1.2-1.4〕。しかし、急性期後後期(診断後121〜365日)では、COVID-19群での精神疾患の新規発症のHRは有意ではなかった(同1.0、0.97-1.1)。

同様の結果は、不安障害でも認められた。不安障害を新規発症した患者の推定罹患率は、急性期後早期では、COVID-19群で2.0%(95%CI 1.8-2.1)、対照群で1.6%(同1.5-1.7)であり、リスクはCOVID-19群で有意に高かったが(HR 1.3、95%CI 1.1-1.4)、急性期後後期ではCOVID-19群での有意なリスク上昇は認められなかった(同1.0、0.91-1.1)。一方、気分障害の新規発症については、急性期後早期と後期のいずれでもCOVID-19群での有意なリスク上昇は認められなかった。

著者らは、「この結果は、COVID-19での精神症状の発現の経過を理解する上で重要な意味を持つ。われわれの研究とは別の研究によりこの結果が裏付けられた際には、保健・医療の場においては、COVID-19罹患後、早期の段階でメンタルヘルスのスクリーニング実施を検討すべきだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年6月14日)

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参考文献

  1. Coleman B, et al. World Psychiatry 2022 June;21(2):319-320.