重度精神疾患患者は心血管疾患による死亡率が高い

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

重度精神疾患(severe mental illness;SMI)患者、特に統合失調症患者では一般集団に比べて、心血管疾患(CVD)関連の死亡率も罹患率も高いとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が、「PLOS Medicine」に2022年4月19日発表された1

英バーミンガム大学のAmanda M. Lambertらは、SMI(統合失調症、双極性障害、その他の非器質性精神病)とCVD〔冠動脈疾患(CHD)、脳血管障害(CVA)、心不全〕の関連を経時的推移も含めて評価するために、システマティックレビューを実施した。まず、MEDLINEやEmbaseなど7件のデータベースを用いて、高所得国でSMIの有無によるCVDによる死亡率やCVDの罹患率の違いを1年以上にわたって比較検討したコホート研究、または症例対照研究を検索。選び出した108件の研究を質的統合の対象とし、これらの中から死亡率については59件(SMI患者1,841,356人、対照群29,321,409人)を、罹患率については28件(SMI患者401,909人、対照群14,372,146人)を対象として、メタアナリシスを実施した。ランダム効果モデルによりSMIを持たない人と比べたSMI患者のCVD(死亡または罹患)のハザード比(HR)と率比、プールされた標準化死亡比(SMR)、オッズ比(OR)、およびリスク比を算出した。

その結果、死亡率については、双極性障害患者での全CVDによる死亡のHR/率比〔1.52、95%信頼区間(CI)0.84-2.75)、P=0.162〕と、統合失調症と双極性障害が混在する患者でのCVAによる死亡のSMR(0.8、同0.16-4.08、P=0.788)を除き、SMI患者では対照群と比べてCVD関連の死亡リスクが高かった。リスクは、双極性障害患者のCVAに対するSMR 1.55(同1.33-1.81、P<0.001)から、統合失調症患者のCVAに対するHR/率比2.40(同2.25-2.55、P<0.001)までの幅があったが、総体的に見ると、プールされた推定リスクは、統合失調症患者で双極性障害患者よりも高かった。さらに、サブグループ解析では、年齢の低い人の方が死亡リスクの高いことも示された(データ詳細は、参考文献1のSupporting Information S20参照)。

罹患率については、SMI患者では対照群に比べて、CHD、主要な心血管イベント、心不全の罹患率が高かった。統合失調症患者での推定罹患リスクは、全心血管イベントのHR/率比1.25(95%CI 1.04-1.51、P=0.016)から心不全の率比3.82(同3.1-4.71、P<0.001)までの幅があった。双極性障害患者では、CHDの罹患率が対照群よりも高かったが*a、統合失調症患者では質のより高い研究(I2値が小さい)においてのみ対照群よりも高かった*b 。

死亡率の経時的推移を10年単位でメタ回帰分析すると、1950〜1970年代を1とした場合に、統合失調症では1990年代のCVAのSMRが1.96(同1.02-3.78、P=0.044)、双極性障害では2000年代のCVDのSMRが1.27(同1.09-1.47、P=0.006)であり、また、CHD罹患のHR/率比は1980年代を1とした場合に1990年代で1.61(同1.14-2.28、P=0.014)と有意に高かった。一方、罹患率については、サブグループでの結果が不十分なためメタ回帰分析は実施できなかった。傾向としては、統合失調症と双極性障害の双方で、CVAとCHDのリスク比(RR)とプールされたHR/率比は、1990年代には増加していた(データ詳細は、参考文献1のFigure 5参照)。

著者らは、「SMIの患者では、特に1990年代以降、また比較的年齢の低い人々において、CVD関連の死亡の率比が2倍前後になっていた。また、SMI患者では1990年以降、対照群と比べて、CVAおよびCHDの罹患リスクも増加していた。さらなる研究によりSMIとCHDの関連性を探り、このリスクを軽減する方法を見つけ出す必要がある」と述べている。

なお、2人の著者が、製薬企業およびバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年4月20日)

 

注釈

*a
HR/率比1.47(95%CI 1.16-1.87、P=0.002)
OR 2.68(同1.51-4.76、P=0.001)
RR 0.97(同0.5-1.88、P=0.928)

*b
標準化罹患比(SIR)1.48(95%CI 1.3-1.69、P<0.001)
HR/率比1.15(同0.99-1.35、P=0.077)
OR 0.76(同0.61-0.96、P=0.022)
RR 0.91(同0.72-1.14、P=0.403)

 

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参考文献

  1. Lambert AM, et al. PLOS Medicine. Published online April 19, 2022. doi: 10.1371/journal.pmed.1003960