統合失調症患者と双極I型障害患者、認知機能障害のパターンや低下時期に違い

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

統合失調症患者および双極I型障害患者では、認知機能が成人期を通して低下するが、低下が起こる年齢や低下のパターンは、両疾患の間でも、また認知機能の種類によっても異なるという研究結果が、「Schizophrenia Bulletin」に2022年1月22日掲載された1

英キングス・カレッジ・ロンドンのJolanta Zanelliらは、Aetiology and Ethnicity in Schizophrenia and Other Psychoses(AESOP)試験の参加者から、初回エピソード精神疾患を持つ16〜65歳の統合失調症患者64人および双極I型障害患者19人と、対照群103人を選出。最長10年間にわたり追跡して認知機能評価を行い、全般的な認知機能と各種の認知機能を比較した。全般的な知的能力(IQ)はWAIS-R(単語、理解、digit symbol coding、積木模様)により評価した。各種の認知機能(記憶、語彙知識、処理速度、実行機能/作業記憶、言語、視空間能力)については、それぞれ別の評価尺度を用いて評価した。平均追跡期間は、統合失調症群で110.4カ月〔標準偏差(SD)26.5カ月〕、双極I型障害群で118.7カ月(同28.2カ月)、対照群で102.9カ月(同34.1カ月)だった。一般化線形混合モデルを用いて対照群と比較した。

その結果、統合失調症群のIQスコアは、16歳から65歳まで一貫して対照群と比べて有意に低かった〔Group-by-age interaction(以下、同)のF=3.88、P=0.022〕。IQスコアの低下は、既に10代後半に始まっており、40歳まで直線的な低下を続けたが、40歳以降は急激には低下せず、対照群との差の拡大は緩徐だった。双極I型障害群におけるIQスコアは、統合失調症群と同様、16歳から65歳まで一貫して低下を続けた(F=6.16、P=0.002)が、低下の仕方は、特に40歳まではより急激だった。

次に各種の認知機能を見たところ、統合失調症群では対照群と比べて、短期視覚想起(F=5.50、P<0.005)、語彙力(F=3.25、P=0.041)、実行機能/作業記憶(F=5.86、P=0.003)、意味流暢性(F=3.53、P<0.005)の有意な低下を認めた。語彙力や実行機能/作業記憶は既に10代後半で顕著な低下を示し、それ以降も低下を続けた。視覚想起や意味流暢性の機能障害は、成人早期に至るまでは明らかな低下は見られなかったが、40歳頃から低下した。言語学習と遅延言語想起、理解、およびdigit symbol codingの低下の幅は大きく、10代後半には既に低下しており、その後の成人期にも、この低下したレベルがほぼそのまま維持された。

双極I型障害群では、言語と語彙力は成人早期までは、むしろ対照群より良好であったが、30歳を過ぎると文字流暢性(F=4.01、P=0.020)と語彙力(F=8.00、P<0.001)が、対照群より有意に低くなった。統合失調症群と同様、言語学習(F=0.87、P=0.42)、遅延想起[言語(F=0.35、P=0.70)と視覚(F=1.58、P=0.20]、処理能力(F=0.07、P=0.93)、実行機能/作業記憶(F=0.42、P=0.65)、意味流暢性(F=0.45、P=0.63)の能力は低下したが、対照群との差は比較的安定した状態が維持されていた一方、統合失調症におけるものほど急激・大幅ではなかった。

著者らは、「統合失調症患者も双極I型障害患者も、発症以後、全体としての、また各種の認知機能が低下するが、低下が始まる年齢は両疾患の間でも、また認知機能の種類によっても異なる。両疾患に共通する、またそれぞれの疾患に特有の病態生理メカニズムが基盤にあって、これが両疾患の成人期にわたる認知機能障害をもたらしているのかもしれない。各種の認知機能を改善するために、それぞれ適切な年齢に達したときに薬剤や精神医学的方法を試みることは、おそらく極めて有効だろう」と述べている。

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※本記事の参考文献1の論文において、2人の著者がLundbeckを含む複数の製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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参考文献

  1. Zanelli J, et al. Schizophrenia Bulletin. Published online January 22, 2022. doi: 10.1093/schbul/sbab150