2008年から2019年の間に米国で自殺未遂が増加

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

米国では2008年から2019年までの間に成人の年間自殺未遂率が増加したが、自殺未遂者のメンタルヘルスサービスの利用に大きな変化は認められなかったことを、米Yale大学医学部のTanner J. Bommerswbachらが、「JAMA Psychiatry」に2022年1月19日報告した1

Bommerswbachらは、National Survey on Drug Use and Health(NSDUH)の2008年から2019年までのデータから、過去1年間の自殺未遂の有無について回答していた18歳以上の成人484,732人(35歳以上69.8%、女性51.8%、非ヒスパニック系白人65.7%)のデータを抽出。同期間における米国成人の年間自殺未遂率(10万人当たり)とその推移を推定するとともに、過去1年間でのメンタルヘルスサービスの利用状況の推移を調べた。諸因子の調整にはロジスティック回帰分析を用いた。

重み付けした10万人当たりの自殺未遂率は2008〜2009年の481.2から2018〜19年には563.9に有意に増加していた〔オッズ比(OR)1.17、95%信頼区間(CI)1.01-1.36、P=0.04〕。これを、年齢、性別、人種/民族、収入、医療保険、居住地などの社会人口学的因子で調整したが、結果は有意なままであった(調整OR 1.23、95%CI 1.05-1.44、P=0.01)。自殺未遂率は、とりわけ、18〜25歳の若年成人(同1.81、1.52-2.16、P<0.001)、女性(同1.33、1.09-1.62、P=0.005)、無職(同2.22、1.58-3.12、P<0.001)、未婚者(同1.60、1.31-1.96、P<0.001)、およびタバコ・アルコールを除く物質使用者(同1.44、1.19-1.75、P<0.001)で増加が顕著だった。

自殺未遂率の上昇との関連が認められた社会人口学的および臨床的因子を種々組み合わせてモデルに投入して調整し、2008年から2019年までの自殺未遂率の変化との関連を見たが、いずれの組み合わせにおいてもこの間の自殺未遂率の上昇は有意という結果となり*a、かつその中で調整ORが最大となったのは、社会人口学的因子と過去1年間の物質使用を調整因子として採用したモデルであった(aOR 1.36、95%CI 1.16-1.60、P<0.001)。サブグループ解析からは、自殺未遂率上昇の独立関連因子として、深刻な精神的苦痛(同7.51、6.49-8.68、P<0.001)、大うつ病エピソード(同2.90、2.57-3.27、P<0.001)、アルコール使用障害(同1.81、1.61-2.04、P<0.001)、離婚/別居(同1.65、1.35-2.02、P<0.001)、無職(同1.47、1.27-1.70、P<0.001)、黒人(同1.41、1.24-1.60、P<0.001)、およびアメリカ先住民またはアラスカ先住民、アジア系、またはハワイ先住民またはその他の太平洋諸島民(同1.56、1.26-1.93、P<0.001)が確認された。

2008年から2019年の間に、過去1年間の自殺未遂歴を報告した4,372人の間で、メンタルヘルス問題を理由とする外来や入院、救急外来などのヘルスケアサービスの利用にほとんど変化は見られなかった。サービスが必要だと感じていたが利用しなかったことを報告した人は、2010〜2011年には34.8%だったのが、2018〜2019年には45.5%に上ったが、研究期間中に有意な変化は認められなかった。

著者らは、「自殺未遂は増加しているようだが、自殺未遂者のメンタルヘルスサービスの利用は増えていない。このような結果を見ると、こうしたサービスは、もっと利用しやすく、受け入れやすいものにすべきであり、同時に国民全体に対して自殺予防対策を講じる必要があるだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年1月20日)

 

注釈

*a
調査年のみを調整因子としたモデル:aOR 1.17(95%CI 1.01-1.36)、P=0.04
調査年と社会人口学的因子を調整因子としたモデル:aOR 1.23((95%CI 1.05-1.44)、P=0.01
(モデル4) 調整因子が調査年、社会人口学的因子、過去1年での物質使用障害およびメンタルヘルス問題を調整因子としたモデル:aOR 1.17 (95%CI 1.00-1.37)、P=0.045

 

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参考文献

  1. Bommersbach TJ, et al. JAMA Psychiatry. Published online January 19, 2022. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2021.3958