COVID-19での急性呼吸窮迫症候群発症により患者家族のPTSDリスクが上昇

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して生じた急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のために集中治療室(ICU)に入室した患者の家族では、COVID-19以外の原因でARDSを発症してICUに入室した患者の家族と比べて、ICU退室後90日時点で外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えているリスクが有意に高いとする研究結果が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」2022年2月18日発表された1

パリ大学(フランス)のElie Azoulayらは、ARDS治療のためにフランスの23カ所のICUに2020年1月から6月の間に入室した患者と、ICU入室中の患者に最も深く関与した家族一人を本試験に登録。対象家族を、COVID-19に関連したARDS発症患者の家族(COVID-19群)と、COVID-19以外の原因(市中肺炎、インフルエンザ)に関連したARDS発症患者の家族(非COVID-19群)に二分した。その上で、患者の退院から90日後に電話調査を行い、家族のPTSD症状の有病率、および不安と抑うつの有病率を調べた。PTSDの症状はImpact of Event Scale Revised(IES-R)で、不安と抑うつはHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)に含まれる不安および抑うつのサブスケールでそれぞれ評価し、IES-Rは22点以上を臨床的に懸念されるPTSDの症状あり、不安と抑うつはどちらも7点以上をそれぞれの症状あり、とした。COVID-19群と非COVID-19群との群間差は、量的変数についてはWilcoxonの順位和検定、質的変数についてはFisherの正確検定で評価し、また、COVID-19の有無と家族の転帰との関連を、多変量ロジスティック回帰モデルにより性別・年齢・婚姻状況・職業・社会的支援を調整して検討した。

研究参加に同意したARDS患者の家族602人のうち、COVID-19群303人と非COVID-19群214人の計517人が電話による調査を完了した。調査は患者の退院から中央値で112日後〔四分位範囲(IQR)90〜147日〕に実施されていた。

これらの患者家族におけるPTSD症状の有病率は、COVID-19群で非COVID-19群に比べて有意に高かった〔35%(103/293人)対19%(40/211人)、差16%、95%信頼区間(CI)8-24%、P<0.001〕。また、不安と抑うつの症状の有病率についても同様に、COVID-19群の方が非COVID-19群よりも有意に高かった〔不安:41%(121/294人)対34%(70/207人)、差8%、同0-16%、P=0.05、抑うつ:31%(91/291人)対18%(37/209人)、差13%、同6-21%、P<0.001〕。特に、退院後の調査が実施される前に患者が死亡していた26%の家族(135/517人、COVID-19群78人、非COVID-19群57人)では、両群間のPTSD症状の有病率の差が大きかった〔COVID-19群63%(48/76人)対非COVID-19群39%(22/56人)、差24%、95%CI 7-40%、P=0.008〕。多変量解析では、「COVID-19によりARDSを起こした患者の家族であること」が、PTSD症状と有意に関連する独立因子であることが示された(オッズ比2.05、95%CI 1.30-3.23、P=0.002)。

著者らは、「ARDSによるICU入室患者の家族の間では、COVID-19がその他の疾患に比べて、患者の退院後90日時点でのPTSD症状リスクと有意に関連していた。悲劇的な出来事が生じた後のウェルビーイングを改善するための介入が必要だ」と結論付けている。

なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)(いずれも本研究外)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年2月25日)

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参考文献

  1. Azoulay E, et al. Journal of the American Medical Association. Published online February 18, 2022. doi: 10.1001/jama.2022.2017