自殺念慮のある外来患者に対する自殺予防プログラム提供は逆効果?

自殺念慮のある患者では、簡易的な自殺予防プログラムへの招待は有効でないとする研究報告が、「Journal of the American Medical Association」に2022年2月15日付で掲載された1。実臨床で行われたランダム化比較試験(RCT)の結果、ケアマネジメントのためのプログラムは自傷リスクを減少させず、弁証法的行動療法(DBT)に基づくスキルトレーニングプログラムは自傷リスクをむしろ上昇させたという。

ケアマネジメントは、気分障害や不安障害の治療を開始した患者ではアドヒアランスや症状を改善するとされる2。弁証法的行動療法(DBT)は構造化心理療法の一種で、自傷行為後の治療に同意した者では自殺企図を減少させると言われている。しかし、こうした介入は、治療を受け入れる可能性の低い者を含む広範な集団では十分に検討されていない。自殺未遂後などの最もリスクが高い者に限定した介入では、自殺念慮を抱く者の大部分には届かないという問題もある3,4。危機的状況後のフォローアップを拒否・中断する者に対し、ケアへの招待や短期的な支援は自殺リスクを減少させるとの報告もあるが5、一定の結論は得られていない。

米カイザーパーマネンテ・ワシントン医療研究所のGregory E. Simonらは、自殺念慮のある外来患者に対し、簡易な支援プログラム2種類を受けさせるRCTを実施した。対象者は、2015年3月~2018年9月、米国4州のヘルスシステムにおいてメンタルヘルス関連の日常診療の一環として「こころとからだの質問票(PHQ-9)」に回答し、過去2週間に自殺や自傷を「半分以上」「ほぼ毎日」考えたと答えた全ての患者とした。

対象者は、ケアマネジメントまたはDBTスキルトレーニングを提供される介入群、または通常ケアのみの対照群のいずれかに1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。ケアマネジメント群およびDBT群では、医師から各プログラムへ招待するメッセージが送信され、患者が応答しない場合はメッセージ再送信や電話による連絡が複数回行われた。ケアマネジメントは、外来患者フォローアップガイドラインに基づくオンラインプログラムであり、ケアマネジャーによる外来受診への動機付けや、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)による自殺リスク評価が行われた。DBTスキルトレーニングは、マインドフルネスなど4つのDBTスキルについてスキルコーチが支援する双方向的なオンラインプログラムであった。

主解析として、各介入群における致死的または非致死的な自傷行為のリスクを評価するためにカプランマイヤー曲線を作成し、Cox比例ハザード回帰により性や年齢、PHQ-9スコアなどを調整して通常ケア群と比べた。さらに副次解析では、死亡や入院に至る重度の自傷行為、医療記録からは確認できない潜在的なイベントも含めた広義の自傷行為などについて、比例ハザード回帰や一般化推定方程式を使用して通常ケア群と比べた。

患者18,644人(45歳以上48%、女性67%)が試験に組み入れられた(ケアマネジメント群6,230人、DBT群6,227人、通常ケア群6,187人)。プログラムの招待への応答率はケアマネジメント群で30.9%、DBT群で38.8%であったが、9カ月後の継続率は各16.8%、1.9%まで低下した。18カ月間にわたる追跡の結果、540人で自傷行為が認められ、そのうち45人は死亡した。自傷行為の推定発生率は、ケアマネジメント群で3.27%(172人)、DBT群で3.92%(206人)、通常ケア群で3.10%(162人)であった。

致死的または非致死的な自傷行為のリスクは、ケアマネジメント群では通常ケア群と同程度であった(ハザード比1.07、97.5%信頼区間0.84-1.37、p=0.52)。DBT群では通常ケア群に比べて、リスクはむしろ高かった(同1.29、1.02-1.64、p=0.015)。

重度の自傷行為の発生件数は、ケアマネジメント群では通常ケア群と同程度であった(同1.03、0.71-1.51、p=0.84)。DBT群では通常ケア群よりも高い傾向が見られたものの、有意な差は認められなかった(同1.34、0.94-1.91、p=0.07)。広義の自傷行為について比べた場合も、ケアマネジメント群(同1.10、0.92-1.33、p=0.23)、DBT群(1.17、0.97-1.41、p=0.06)ともに通常ケア群との間に有意差は認められなかった。

Simonらはこの結果について、「今回の知見は、検証した2つの自殺予防プログラムを導入することを支持しないものである」と結論付けている。(編集協力HealthDay)

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参考文献
  1. Simon GE, et al. Journal of the American Medical Association. 2022 Feb 15;327(7):630-638.
  2. Woltmann  E, et al. American Journal of Psychiatry. 2012;169(8):790-804.
  3. Ahmedani BK, et al. Journal of General Internal Medicine. 2014; 29(6):870-877
  4. Ahmedani, et al. Medical Care. 2015;53(5):430-435.
  5. Carter  GL, et al. The British Journal of Psychiatry. 2007;191:548-553.
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