うつ病に対する社会的偏見は2006年から2018年にかけ減少

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

うつ病に対する社会のスティグマ(差別や偏見)が減少したとする研究結果が、「JAMA Network Open」に2021年12月21日に掲載された研究1で明らかにされた。

米インディアナ大学のBernice A. Pescosolidoらは、US National Stigma Studies(US-NSSs)で収集されたデータを用いて、精神疾患に対して抱かれているいくつかのスティグマについて、その傾向や集団ベースで見た変化の大きさを調べた。US-NSSsでは、1996年に鉛筆・紙媒体を用いて対面式の面接が、2006年と2018年にはコンピュータを用いた形式の面接が実施された。調査では、統合失調症・大うつ病性障害(以下、うつ病)・アルコール依存症の3つの精神障害それぞれにつき、DSM-4の基準を満たす症状・行動を伴う架空の人物と、対照として日常的な悩みを抱えた人物を提示して、これらの人物に対する対象者の反応を求めた。質問の内容は、これら精神障害の原因はそれぞれ何と考えるか、精神障害者は危険(他者に危害を及ぼす)であると考えるか、精神障害者に拒絶感(社会的距離を置きたい)を抱くか、などであった。最終的に対象とされた4,129人(1996年から1,438人、2006年から1,520人、2018年から1,171人)の平均年齢は44.6歳(標準偏差16.9)で、2,255人(54.6%)が女性であった。対象者の年齢、性別、人種/民族、教育水準は、米国国勢調査のデータと概ね一致していた。各調査年の間に変化した社会人口学的因子を調整するため、ロジスティック回帰モデルを使用して解析した。

まず、精神障害の原因についての結果は、遺伝的要因が関係すると考える者が、1996年から2006年にかけて増加していた(統合失調症11.8%増、P=0.006;うつ病13.0%増、P=0.003;アルコール依存症10.9%増、P=0.014)。原因として社会的要因と道徳的要因を挙げる人は比較的少なく、かつ1996年から2018年にかけての、これらの変化は小さかったものの、アルコール依存症については、「性格の問題」を挙げる人が18.2%増加していた(P=0.001)。次に、「危険と考えるか」について見たところ、統合失調症が危険と考える人は15.7%増えていた(P=0.001)。

拒絶感については、統合失調症とアルコール依存症では、大きな変化は認められなかった。これに対し、うつ病では、2006年から2018年の間に、うつ病患者と社会的距離を置きたいとする人が減少した。状況別の減少の程度は、「一緒に仕事をしたくない」18.1%減(P=0.000)、「仲良く交際したくない」16.7%減(P=0.000)、「友人になりたくない」9.7%減(P=0.004)、「結婚して家族の一員になってほしくない」14.3%減(P=0.003)、「グループホームの近くに住みたくない」10.4%減(P=0.018)であった。

回答者の年齢、性別、人種/民族、教育水準などの因子別にサブグループ解析したところ、若年者、高齢者それぞれ、回答の傾向は調査年によらずほぼ同等であった。高齢者は、1996年、2006年、2018年のいずれの時点でも、うつ病患者が結婚の結果家族の一員になることを好まなかった(それぞれ62%、58%、43%、いずれもP=0.01)。また、高卒以下の教育水準の者は、うつ病患者が、2018年では近所に住むことを好まず(18%、P=0.05)、2006年では家族と結婚することを好まなかった(58%、P=0.02)。

著者らは、「うつ病に対するスティグマは減っており、同時に、統合失調症・うつ病・アルコール依存症全てにつき、原因は神経生物学的なものと考える者が増えていた。このことを踏まえ、うつ病に対するスティグマが減った要因は何か、また、統合失調症とアルコール依存症では減っていないのはなぜかを探るべきだ。精神疾患は、世界レベルでの疾病負荷に大きく寄与していることから、現在の科学の限界を突き破るような方策を取ることで、市民の健康を良い方向へ持っていけるだろう」と述べている。

なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年12月21日)。

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参考文献

  1. Pescosolido BA, et al. JAMA Network Open. Published online December 21, 2021. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.40202