重度の精神障害者はCOVID-19の感染・入院・死亡リスクが高い

提供元:AJ Advisers LLCヘルスデージャパン

重度の精神障害(SMI)を有する人では、新型コロナウイルスへの感染リスクと、感染した場合の入院や死亡のリスクが高いことが、英マンチェスター大学のLamiece Hassanらが「Molecular Psychiatry」に2021年12月7日発表した論文1で明らかにされた。

Hassanらは、UKバイオバンク(UKB)コホート研究の参加者のうち、2020年1月31日までの生存が確認され、診療記録のデータベースで2021年2月28日まで追跡できた、イングランドとスコットランドの患者447,296人(平均年齢67歳、女性55%)を対象に、SMIと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の転帰(感染、入院および死亡のリスク)について調査した。対象者は、統合失調症/精神病(1,925人)、双極性障害(1,483人)、大うつ病性障害(41,448人)、SMIなし(402,440人)の4群に分類された。

多変量ロジスティック回帰モデルを用いて解析した結果、COVID-19による死亡の未調整のオッズ比(OR)は、SMIなしの群を1とした場合、統合失調症/精神病群で4.84〔95%信頼区間(CI)3.00-7.34、P<0.05〕、双極性障害群で3.76(同2.00-6.35、P<0.05)、大うつ病性障害群で1.99(同1.69-2.33、P<0.05)であり、SMIを有しているとCOVID-19による死亡リスクが高くなることが判明した。また、感染と入院のリスクも、SMIの各群で有意なリスク上昇が認められ、特に、統合失調症/精神病群(感染:OR 1.61、95%CI 1.32-1.96、P<0.05、入院:同3.47、2.47-4.72、P<0.05)、および双極性障害群(感染:同1.48、1.16-1.85、P<0.05、入院:同3.31、2.22-4.73、P<0.05)で顕著だった。入院リスクと死亡リスクは、年齢や性別、人種などの社会人口統計学的特性と喘息などの併存疾患を調整した後でも、全てのSMI群で有意に高いままであった*。一方、感染リスクについては、有意にリスクが高かったのは大うつ病性障害群のみであった(同1.24、1.18-1.30、P<0.05)。

著者らは、「SMIを有する者ではCOVID-19に関わるリスクが一般の人たちより明らかに増加していた。しかし、この増加している分のうち、社会人口統計学的特性や併存疾患で説明できる部分は一部に過ぎなかった。SMIを有する者は、COVID-19に対して特に脆弱と考えられることから、ワクチン接種と予防措置を優先的に施す必要があるだろう」と述べている。(HealthDay News 2021年12月17日)

 

注釈
*いずれも、OR、95%CI、P値の順
[入院]
大うつ病性障害:1.65、1.48-1.82、P<0.05
双極性障害:2.20、1.46-3.18、P<0.05
統合失調症:2.12、1.50-2.90、P<0.05

[死亡]
大うつ病性障害:1.62、1.37-1.91、P<0.05
双極性障害:2.49、1.30-4.29、P<0.05
統合失調症:3.14、1.92-4.81、P<0.05

 

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参考文献

  1. Hassan L, et al. Molecular Psychiatry. Published online December 7, 2021. doi: 10.1038/s41380-021-01344-2