本邦において統合失調症治療ガイドライン2021年版が発行

日本神経精神薬理学会(JSNP)による統合失調症の薬物治療に関する新たなエビデンスベースのガイドライン1が、橋本亮太先生(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神疾患病態研究部、東京、日本)が座長を務める第7 回アジア神経精神薬理学会大会(AsCNP 2021、バーチャル形式、2021102223日)のバーチャルセッションで発表されました。

セッションのはじめに、内田裕之先生(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室、東京、日本)が、日本の統合失調症患者に対する治療ガイドラインを開発することの根本的な理由に重点を置いて、こういったガイドラインの必要性が生じた複数の日本特有の特徴を説明しました。

内田先生によれば、メタ解析において評価され、国際ガイドラインで推奨されている抗精神病薬の大部分が日本では上市されておらず、また、日本と他国では医療システムや保険制度に様々な違いがあり、ジェネリック医薬品の利用可能性や許容状況にも差があります。

考慮すべきもう一つの重要な点として、治療の選択が医師個人の思考や行動様式の影響を受けやすいということがあります。例えば、持効性注射剤(LAI)はオーストラリアで広く処方されている一方、日本での使用頻度ははるかに下回ります2

新しいガイドラインは本邦における統合失調症患者及び医師の特異的なニーズを満たす

JSNPによる推奨事項の要約が、他の講演者により紹介されました。

初回エピソード精神病(FEP)の場合1

  • 第一世代抗精神病薬 (FGA)よりも第二世代抗精神病薬(SGA)の使用を推奨する。
  • SGAを選択する場合、特定の推奨薬剤はない。
  • 抗精神病薬による治療効果、及び有害事象に対する感受性が高い。
  • 治療は低用量で開始し、効果を評価しながら徐々に増量する。
  • 再発予防のために、抗精神病薬の投与は1年以上継続する。*

*JSNP ガイドラインの開発以降に発表された無作為化対照比較試験10試験のメタ解析において、FEP患者に対する抗精神病薬の投与を維持することで再燃が最長24ヵ月間抑制され、2ヵ月以上投与を中止すると再燃リスクが有意に増大することが示されました3。そのため、本ガイドラインの次版で、この新たな解析結果を反映するための改訂が行われることが予想されます。

初回エピソード精神病の患者には抗精神病薬の投与を1年以上継続する

再発および再燃の場合1

  • 現在使用中の抗精神病薬の用量、投与期間及び服薬遵守が適切であることを確認してから、増量又は切り替えを考慮する。
  • 投与中止による再発/再燃の場合は、新たな抗精神病薬を選択する前に、以前の抗精神病薬の反応性及び有害事象を検討する。
  • 服薬遵守が良好にもかかわらず再発/再燃が起こる場合は、可能であれば増量する。
  • 抗精神病薬を限界用量まで増量後、2~4週間は治療効果がみられるも、8週間後に効果がみられない場合は、抗精神病薬を切り替える。
  • 抗精神病薬又はその他の向精神薬との併用療法については、その効果が不確かであり、かつ有害事象を増加させる可能性があるため、単剤療法が推奨される。

維持療法の場合1

  • 維持期の患者には抗精神病薬の投与を継続する。
  • 継続投与では1日1回投与を行う。
  • 服薬遵守不良により再発した患者、及びLAIを必要とする患者には、LAIを使用する。
  • 再発予防、継続投与および有害事象に関して、SGAはFGAよりも優れている。
  • 各種SGAの比較に関するエビデンスは不十分であり、SGAの中で特に推奨される薬剤はない。
  • 維持期の患者に対する抗精神病薬の減量に関する結果は一貫していない。

推奨事項全文、並びに治療抵抗性及びその他の臨床的問題に関する推奨事項は、発行されたガイドラインに記載されています1

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Japanese Society of Neuropsychopharmacology. Neuropsychopharmacology Rep 2021;41: 266-324.
  2. 星和書店「持続性注射製剤治療のすべて」2018; ISBN978-4-7911-0994-4.
  3. Kishi T, et al. Psychol Med 2019;49:772-779.
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