大うつ病エピソード発現中に脳内で何が起きているのか?

常に「人口の4%に大うつ病エピソード(MDD)が生じており、そのうち50%は治療に反応しない」とJeffrey Meyer教授(トロント大学、カナダ)は世界精神医学会議2021(WCP2021、2021年3月10~13日、バーチャル開催)で述べました1,2。新たな画像法により、MDDに関与している脳神経回路の領域が、治療に反応する患者と反応しない患者で異なることが示されています。

 

 

 

ミクログリア活性化及び神経炎症のエビデンス

ミクログリアは大うつ病エピソード発症中に活性化する

「ミクログリア活性化は神経炎症において重要な役割を担い、神経進行性変化(neuroprogression)に関与している」とMeyer教授は述べています。これはミクログリア活性化マーカーである輸送タンパク質(translocator protein, TSPO)を測定することで実証可能です3

輸送タンパク質の総分布容積(TSPO distribution volume, TSPO VT)は、PET撮影を用いて測定します3。大うつ病性障害(MDD)患者ではTSPO VTの増加と、それによるミクログリア活性化が複数の研究で一貫して認められています4

Meyer教授は、以下に該当する患者では、大うつ病エピソード発症中のTSPO VTの増加が特に大きいことを強調しました。

  • 罹病期間が長い(F1,46 = 9.4 - 15.4, p = 0.0003 – 0.0037)3
  • 長期間抗うつ薬治療を受けていない(F1,46 = 7.2 – 9.2, p = 0.0039 – 0.010)3

 

MDDに関与する脳領域でのミクログリア活性化

ミクログリア活性化は、MDDに関与する神経回路でも生じる

Meyer教授によると、大うつ病エピソード発症中は健常対照群と比較して、前頭前皮質、前帯状皮質、島、背側被殻、腹側線条体、視床及び海馬でTSPO VTが有意に増加します3

「このように、TSPO VTはMDDに関与している神経回路に及んでいる4」とMeyer教授は説明しています。これら神経回路の機能的及び構造的結合における特定の機能障害は、さまざまな情動行動、認知行動、内省的行動、及びその結果としてのMDDの異質性の原因であるとされています5

ミクログリア活性化は、未治療期間の長期化と関連する

 

ミクログリア活性化の潜在的血清マーカー

Meyer教授によると、血清マーカーによってTSPO VTを予測し、複雑な画像法を必要とすることなくMDDにおけるミクログリア活性化及び神経炎症の役割を検討できる可能性があります。

候補となるマーカーとしてプロスタグランジンE2(PGE2)及び腫瘍壊死因子α(TNFα)があり、いずれも活性化ミクログリアによって合成されます。

PGE2及びTNFαの血清中濃度は、TSPO VTと一貫して相関する

末梢性炎症の指標であるC-反応性蛋白によって制御されるPGE2及びTNFαの血清中濃度を測定した結果、以下の患者で前頭前皮質のTSPO VTと正の相関が認められました6

  • MDDに起因する大うつ病エピソード患者20名( Ln(PGE2/CRP) R2 = 33.0, p = 0.0048; Ln(TNFα/CRP) R2 = 36.2, p = 0.003)
  • MDDに起因する治療抵抗性大うつ病エピソード患者56名( Ln(PGE2/CRP) R2 = 10.8, p = 0.0076; Ln(TNFα/CRP) R2 = 14.0, p=0.0026)

「このように、PGE2及びTNFαにより前頭前皮質のTSPO VTが予測可能であり、ミクログリア活性化及び神経炎症のバイオマーカーとなることが強く期待される6」とMeyer教授は述べています。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Ustün TB, et al. Br J Psychiatry. 2004;184:386–92.
  2. Trivedi MH, et al. Am J Psychiatry. 2006.
  3. Setiawan E, et al. Lancet Psychiatry. 2018;5:339–47.
  4. Meyer JH, et al. Lancet Psychiatry. 2020;7:1064–74.
  5. Williams LM. Lancet Psychiatry. 2016 May; 3(5): 472–480.
  6. Attwells S, et al. Neuropsychopharmacology. 2020;45:925–31.
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