精神疾患治療の効果の予測、モニタリングおよび測定のための有望なバイオマーカー

世界精神医学会議2021(WCP2021、2021年3月10~13日、バーチャル開催)において、Gregor Hasler教授(フリブール大学、スイス)は、精神疾患の治療効果を画像、血液およびデジタルバイオマーカーを用いて予測、モニタリングおよび測定することができると話し、使用するバイオマーカーとして、磁気共鳴スペクトロスコピーで示されるグルタミン酸関連バイオマーカー、血清中の脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor、BDNF)、スマートフォンやセンサーで収集する新たな各種デジタルバイオマーカーをあげました。

Gregor Hasler教授によると、精神疾患の一般的な特徴として、遺伝子型の不均一性が挙げられますが、生物学的マーカーに関するエビデンスは不十分であり1、精神疾患診断統計マニュアル第5版(DSM-5)に基づく診断2は生物学的妥当性を欠くといいます。

バイオマーカーは治療効果を予測できるものでなければならない

 

有望なバイオマーカーの特徴

Hasler教授は、MRI画像、血液、スマートフォンやセンサーのデジタルデータにおいて様々な有望なバイオマーカーが同定されていると話しました。これらのバイオマーカーには以下が必要となります。

  • DSM掲載疾患との関連
  • 発病過程との関連
  • 治療効果の予測能力およびトランスレーショナルリサーチへの応用可能性

 

グルタミン酸関連バイオマーカー

気分障害や不安障害の早期には前頭前野におけるグルタミンの増加が認められる

Hasler教授は、薬物治療を受けていない成人の大うつ病性障害(MDD)患者と対照被験者で、磁気共鳴スペクトロスコピー法を用いてグルタミン酸関連バイオマーカーを比較した自身の研究について述べました3

この研究では、脳の背内側/背側前外側前頭前野におけるグルタミン酸/グルタミンおよびγ-アミノ酪酸(GABA)の異常な減少が明らかになり、これは死後の病理組織検査でみられる所見と一致するものでした3,4

Hasler教授は、気分障害や不安障害の早期には前頭前野におけるグルタミンの増加が認められることから5、ストレス関連疾患におけるグルタミン酸/グルタミン障害に関する理解を深めることが、新たな治療戦略につながると話しました。

細胞外グルタミン酸濃度が高くなると神経樹状突起や神経棘を損傷する

Hasler教授は、発病過程の観点から、MDDが長期化すると前頭前野におけるグルタミン酸の放出に変化がみられ、グルタミン酸の取り込みが減少することを示した研究に言及しました。結果的に細胞外グルタミン酸濃度が高くなると、神経樹状突起の損傷や、神経棘の密度やシナプス強度の低下がみられます6

 

血中バイオマーカー

抗うつ薬が奏効した患者では治療後の血清中のBDNFが増加していた

Hasler教授によれば、BDNFなどの神経栄養因子や、ストレス関連バイオマーカー、炎症バイオマーカー、エピジェネティックバイオマーカーは、いずれも血液で測定できるといいます。さらに、2020年の系統的レビューおよびメタ解析で血清中BDNF濃度について明らかになった以下の点を強調しました。

  • MDD患者では血清中BDNF濃度が低下する7
  • 抗うつ薬が奏効した患者では治療後の血清中BDNF濃度が増加していた7

 

デジタルバイオマーカー

デジタルバイオマーカーは精神疾患のバイオマーカーとして有望視されている

Hasler教授は、スマートフォンやセンサーで収集するデジタルバイオマーカー(電話の使用、活動および声の特徴など)は、精神疾患に特異的な行動と関連している可能性があると話しました8,9。デジタルバイオマーカーは、将来的には精神疾患のバイオマーカーとしてさらに重要な役割を果たすと考えられます。

参考文献
  1. Hasler G, et al. Neuropsychopharmacology 2004;29:1765–81.
  2. https://dsm.psychiatryonline.org/doi/book/10.1176/appi.books.9780890425596 (2021年3月30日閲覧)
  3. Hasler G, et al. Arch Gen Psychiatry 2007;64:193–200.
  4. Rajkowska G, et al. Biol Psychiatry 1999;45:1085–98.
  5. Hasler G, et al. Transl Psychiatry 2019;9:170.
  6. Abdallah CG, et al. Annu Rev Med 2015;66:509–23.
  7. Shi Y, et al. Eur Neuropsychopharmacol 2020;41:40–51.
  8. Spinazze P, et al. BMJ Open 2019;9:e032255.
  9. Low DM, et al. Laryngoscope Invest Otolaryngol 2020;5:96–116.
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