治療抵抗性うつ病の高齢者における記憶障害とアミロイドβ量

2021年国際神経精神薬理学会(CINP Virtual 2021、2021年2月25日~2月28日、バーチャル開催)で発表された研究1によれば、治療抵抗性うつ病の高齢患者は、非治療抵抗性うつ病(非TRD)患者よりも認知障害の程度が大きく、脳内のアミロイドβが多く認められました。これらの知見は、アミロイド負荷、認知障害、うつ病、最終的には認知症リスクの可能性との関連を裏付けるものです。

うつ病は認知症の危険因子であり、前駆症状にもなりえます。これは、最近、スウェーデンで行われたうつ病患者とそれ以外に対する大規模な国内のコホートの結果によるもので、今後35年間に起こる認知症の発症も探索されました。

認知症リスクは、うつ病の診断から1年後で10~20倍高く、20年後では認知症リスクも減少しますが、依然として高いものでした*a。認知症リスクは中等度よりも重度のうつ病で高く、家族性および人口統計学的因子の調整後も高いままでした*b 1

うつ病診断の20年後でも認知症リスクが上昇する

 

媒介因子の探索

大うつ病性障害(MDD)で認知症に進行する人は一部に過ぎないと言われています。したがって、他の因子、特にアミロイドβ負荷が関与しているかどうかに関心が寄せられています。

アミロイドβの存在は、認知機能が正常被験者においてその後の認知症を強く予測します2。MDD患者では、より高いアミロイド β 負荷が記憶能力の低下に関連するという仮説を裏付ける所見が得られています3

これらの知見は、台湾の研究者グループが高齢者における治療抵抗性うつ病(TRD)の役割に特に注目し、神経画像診断および認知症研究を初めて実施することによって明らかになりました。4

うつ病患者の認知症を確実に予測するバイオマーカーが必要である

 

言語想起障害はTRDにおける認知症リスクのマーカーになるか?

研究では、TRDを有する50歳の被験者26名、非TRD被験者28名、健常対照者26名、およびアルツハイマー病(AD)を有する少数の患者群に対し、Pittsburgh Compound‐B画像(PiB‐画像)アミロイドイメージングを行いました。4

CINP 2021 Virtualで結果を発表したHsuan Lee(台北退役軍人総合病院、台湾)は、高齢MDD患者は健常対照者よりも全般的にアミロイド量が高いと報告しました。4

詳しくは下記のとおりです。

  • 高齢TRD患者は、非TRD患者または健常対照者のいずれと比較した場合でも、前部および後部帯状皮質、頭頂皮質、および後頭皮質におけるアミロイド沈着がより多くみられた(cluster-level FWE-corrected p<0.001)5。これはAD患者にも当てはまった。
  • 認知に関しては、TRD患者は、年齢、性別、教育、うつ病スコアで調整後、非TRD患者または健常対照者のいずれと比較した場合でも、単語リスト想起テストにおける即時および遅延記憶の障害が有意により多くみられた*c
  • TRD患者は対照被験者よりもMoCA(モントリオール認知的評価)のスコアが低かったが、非TRD患者と健常対照の間には差がなかった。

TRD患者の後部帯状皮質アミロイド沈着は単語リストの即時想起と強い負の相関を示しました(r=-0.93)。

これらの結果及び、高齢者うつ病の重症度と他の研究者が発見したPiBの蓄積との間に正の相関があることを示すエビデンスから(PIB-BPNDとGDS-うつ病スコアの相関関係(N = 29):r=0.61,p=0.005)5,6、台湾人被験者集団において、言語想起の低下がTRD患者における認知症リスクの潜在的な予測因子である可能性が示唆されています。

 

データの詳細
*a
0~5.9ヶ月後:調整後オッズ比(aOR) 15.20(95%CI 11.85–19.50)、N=238,772、6~11.9ヶ月後:7.83(6.24–9.83)、N=232,274、20年以上:1.58(1.27–1.98)、N=26,044、いずれもp<0.001。*

 

*b
うつ病の診断後10年以上後の認知症リスク:軽度のうつ病:aOR 1.39 (95%CI 0.83–2.36)、p=0.212、N=10,030、中等度:1.41 (1.02–1.95)、p=0.037、N=24,746、重度:1.75 (1.29–2.36]、p<0.001、N=20,540。

 

*c
単語リスト想起テスト1:コントロール(N=26)=想起単語数平均値31.6(SD 6.0)、非TRD患者 (N=28)=30.2(6.0)、TRD患者 (N=26) =24.0(7.1)、F=10.4、p<0.001、単語リスト想起テスト2:コントロール=7.6(2.7)、非TRD患者 (N=28) =6.6(3.2)、TRD患者 (N=26) =5.3(2.3)、F=4.557、p=0.013。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Holmquist S et al. PLoS Med 2020;17(1): e1003016 
  2. Lopez OL et al. Neurology 2018 May 22, 2018; 90 (21)
  3. Wu K-Y et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2016;43(6):1067-76
  4. Lee H et al. CINP 2021 Free Communication Session 3, Book of Abstracts 33-35, https://virtual.cinp2021.org/wp-content/uploads/2021/02/CINP2021_virtual_abstractbook.pdf(2021年11月17日閲覧)
  5. Li Ch et al. Psychol Med 2021;1-11, doi: 10.1017/S0033291721001070
  6. Yasuno F et al. Int J Geriatr Psychiatry 2016;31(8):920-8
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