COVID-19の精神神経症状、SARSやMERSと比較

一部の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者でせん妄を来す可能性があるとする報告を、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJonathan P. Rogersらが「The Lancet Psychiatry」2020年5月18日オンライン版1に発表した。

Rogersらは今回、MEDLINEやEmbaseなど4つの文献データベースおよび3つのプレプリント・レポジトリ(medRxiv、PsyArXiv及びbioRxiv)から、コロナウイルス感染症、すなわち、重症急性呼吸器症候群(SARS、2002年発生)、中東呼吸器症候群(MERS、2012年発生)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者において観察された精神神経症状について報告している1,963件の研究論文と87件のプレプリントを抽出し、うち65件の査読を受けた論文と7件のプレプリントをシステマティックレビューのための解析に採用した。

解析対象となった研究は、中国、香港、韓国、カナダ、サウジアラビア、フランス、日本、シンガポール、英国、米国で実施されたものであった。これらの研究で報告されたコロナウイルス感染症の症例は、総計3,559例(SARS:47件の研究、2,068症例、MERS:13件の研究、515症例、COVID-19:12件の研究、976症例)で、平均年齢は12.2歳から68.0歳であった。

急性期のSARSおよびMERSを対象とした25件の論文のうち、2件は精神神経症状のチェックリストをそれぞれの調査に応じた形で使用され、症状・徴候が体系的に評価されていた。この2件の研究結果を統合したところ、SARSまたはMERSで入院中の129例に共通する症状として、錯乱が27.9%(95%信頼区間20.5〜36.0、36例)、抑うつ気分が32.6%(同24.7〜40.9、42例)、不安が35.7%(同27.6〜44.2、46例)、記憶障害が34.1%(同26.2〜42.5、44例)、不眠が41.9%(同22.5〜50.5、54例)に、認められた。

次に、SARSおよびMERS回復後の精神神経症状について調べた研究は40件(追跡期間60日〜12年)で、多く報告されていたのは、抑うつ気分10.5%(同7.5〜14.1、332例中35例)、不眠12.1%(同8.6〜16.3、280例中34例)、不安12.3%(同7.7〜17.7、171例中21例)、興奮性12.8%(同8.7〜17.6、218例中28例)、記憶障害18.9%(同14.1〜24.2、233例中44例)などであった。また、回復後における時点有病率を、ランダム効果モデルを用いたメタアナリシスで解析したところ、不安障害が14.8%(同11.1〜19.4、3件の研究で284例中42例)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が32.2%(同23.7〜42.0、4件の研究で402例中121例)、抑うつが14.9%(同12.1〜18.2、5件の研究で517例中77例)であった。

一方、COVID-19患者に関しては12件の研究を採用した。集中治療室で治療したCOVID-19患者58例を対象にした1件のフランスの研究では、鎮静薬と神経筋遮断薬の効果が切れた後、69%(40例)の患者に焦燥感が認められたほか、Confusion Assessment Method for the ICUで評価した40例の患者のうち65%(26例)に錯乱が認められ、また退院時には患者の33%(45例中15例)で遂行機能障害が認められた。これとは別に、後に死亡した患者82例を対象にした1件の研究は、21%(17例)に意識変容が生じたことを報告している。

著者らは、「せん妄はSARS、MERS、COVID-19の急性期に共通して見られる症状であると考えられる。COVID-19でも、急性期にはかなりの数の患者がせん妄を来す可能性がある。また、SARSとMERSでは、抑うつ、不安、PTSDが見られるというエビデンスが得られた。COVID-19ではこれらを示すデータはほとんどなく、COVID-19患者の多くは精神障害を経験することなく回復すると思われるが、臨床医はこれらが長期的には出てくる可能性を忘れるべきでない」と結論付けている。

なお、2名の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2020年5月20日)

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参考文献
  1. Rogers JP, et al. Lancet Psychiatry. Published online May 18, 2020.
    doi: 10.1016/S2215-0366(20)30203-0
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