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Progress in Mind
重度の精神障害を有する人の多くは、身体活動の低下、不健康な食生活、高い喫煙率などの慢性疾患の行動上の危険因子を有しています1。EPA 2020シンポジウム(第28回欧州精神医学会、2020年7月4~7日、バーチャル形式)では、身体的な運動や心理社会的なサポートなどによるライフスタイル介入が、これらの危険因子を減少させる上で重要な役割を果たす可能性が示唆されました。
慢性疾患に関連するリスク因子行動は転帰不良につながる
重度の精神障害には重大なアンメット・ニーズが依然として存在する
重度の精神障害には重大なアンメット・ニーズが依然として存在しています。回復率はわずか15〜45%2であり、特に認知機能障害や陰性症状の治療効果は低いです。一般集団と比較して平均余命は12年短く3、死亡率は2倍4となっています。リスク因子行動は薬物の代謝性副作用によって増強されることもあり、さらに、こうしたリスク因子の多くには容易な解決策がありません。
生活習慣行動介入の必要性
慢性疾患の予防と治療は平均余命と死亡率を改善するために重要
慢性疾患の予防と治療は平均余命と死亡率を改善するために重要です。Lancet Psychiatry委員会の「精神疾患を有する人々の身体の健康を守るための青写真(’A blueprint for protecting physical health in people with mental illness’)」1および世界保健機関の「重度の精神障害を有する人々の健康な生活を助ける(”Helping the people with severe mental disorders live and healthier life”)」5では、生活習慣行動の介入と、医療従事者、介護者、患者間の協力の重要性が強調されています。
身体運動のプラス効果
Peter Falkai教授(ドイツ・ミュンヘン大学)は、身体的な運動には精神的にも肉体的にもメリットがあると述べています。STRIDE試験6では、抗精神病薬を服用患者に食事と身体的な活動を含むライフスタイル介入を行うと、ベースラインと比較した介入12カ月時点の体重および空腹時血糖は、対照群と比較し介入群で有意に減少することが示されました[各F(1,161)=4.9、p=0.029;一元配置共分散分析、発生率比対数= -0.089、p = 0.012;ロジスティック回帰分析)] 。
全身持久力トレーニングと認知機能リハビリテーションの併用は認知と機能の有意な改善と陰性症状の減少をもたらした
統合失調症の患者では、有酸素運動が全般的認知能力を改善することを示しました(g=0.33, 95%CI=0.13-0.53, p=0.001)7。持久力トレーニング(サイクリング)と認知機能改善を併用することで、ベースラインと比較した介入3カ月時点の認知に関連する各スコア、VLMT-STM(Verbal Learning Memory Test - Short-Term Memory)(p=0.042)、TMT-B(Trail Making Test version B)(P=0.010)および機能に関連するスコア、GAF(Global Assessment of Functioning)(p=0.030)が有意に改善し、陰性症状に関連するPANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)陰性スコア(p<0.05)も有意に減少しました(いずれも繰り返しのある二元配置分散分析)8。また、有酸素運動は脳の構造および機能に影響を及ぼし、シナプス経路および神経原性経路を介して機能的可塑性を高める可能性も示されています9。
大規模研究で運動介入効果を実証することは小規模試験よりも困難であることから、運動介入の性質が重要であると考えられます。例えばCHANGE試験10では、統合失調症かつ肥満の患者を対象に、生活習慣に関する指導とケアを協調的に行ったCHANGE群およびケアコーディネーション群と通常治療を行った群の3群で検討しています。その結果、それぞれ認知に関連するBACS(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia)複合スコアは244.3±50.1、235.8±50.2、242.0±49.5、精神病症状に関連するSAPS(Scale for the Assessment of Positive Symptoms)グローバルスコアは1.7±1.6、1.7±1.6、1.8±1.6、陰性症状に関連するSANS(Scale for the Assessment of Negative Symptoms)グローバルスコアは2.1±1.2、2.0±12、2.0±1.2、そして、心血管疾患の平均年齢10年リスクは8.4±6.7%、8.5±7.5%、8.0±6.5%でした(いずれもMean±SD、統計学的な有意差なし)。
健康的な生活習慣行動の採用における心理社会的介入の役割
現実世界の研究において、心理社会的介入が長期にわたって実行可能かつ効果的であることを確認することの重要性
心理社会的介入は患者の健康的な生活習慣行動の採用を支援しうることが示唆されています11。
Gaia Sampogna医師(イタリア・カンパニア大学)は、現実世界における研究では、心理社会的介入が長期にわたって実行可能で効果的であることを確認する必要性を主張しています11。同医師らは、現在、情報提供、動機づけ、問題解決の要素を含むライフスタイル介入を試みているとのことです。
Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.
1. Firth J, et al. Lancet Psychiatry 2019;6:675-712
2. Watt DC, et al. Psychological Med 1983;13:663-70
3. Chang C-K, et al. PLoS One 2011;6:e19590
4. Walker ER, et al. JAMA Psychiatry 2015;72:334-41
5. https://www.who.int/mental_health/evidence/policy_brief_on_severe_mental_disorders/en/(2020年11月12日閲覧)
6. Green CA, et al. Am J Psychiatry 2015;172:71-81
7. Firth J et al. Schizophr Bull 2017;43:546:56
8. Malchow B, et al. Schizophr Bull 2015;41:847-58
9. Papiol S, et al. Transl Psychiatry 2017;7:e1159
10. Speyer H, et al. World Psychiatry 2016; 15: 55–165
11. De Rosa C, et al. Expert Rev Neurother 2017;17:667-81