治療抵抗性うつ病の負担軽減に重要な早期治療の最適化

欧州のコホート研究1で得られた最近のリアルワールドエビデンスによると、治療抵抗性のうつ病は疾病負担の大きさ、機能障害、健康関連Quality of Lifeの低さ、生産性低下に関連しています。治療抵抗性のうつ病はよく認められますが、治療可能であることから1、早期かつ有効な介入が非常に重要になります。

Allan Young(King’s College、ロンドン、イギリス)は、治療抵抗性うつ病(TRD)により、患者や社会は概して高額な費用を負担していると、EPA2021バーチャル会議(The 29th European Congress of Psychiatry、2021年4月10日~13日、バーチャル開催)のサテライトシンポジウムで述べました。

TRD患者411人(このうち45.7%が3剤以上の抗うつ薬の効果が不十分であった)を対象に行った最近の試験では、対象患者のうち労働障害に至った割合は61%、失業に至った割合30%、長期病欠に至った割合19%でした2。Clinical Global Impressions Scale for Severity(重症度の臨床全般印象尺度)によると、対象患者の半数以上が「顕著な精神疾患(markedly ill)」、14%が「重度の精神疾患(severely ill)」に分類されました。

一般的に抗うつ薬の「治療無効」とは、2剤以上を連続して十分な期間試したものの効果がなかった場合と定義され、大うつ病性障害(MDD)の患者の3分の1が治療抵抗性であり、入院や救急外来などの費用を含む医療費や自殺リスクと関連し、深刻な問題を引き起こしているとYoungは述べました3-6

寛解に達するために最適とされる治療開始時期は、MDD発症から6ヵ月以内である7

 

治療早期の重要な機会

このテーマについて、Diane McIntosh(バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)は、TRDに対する治療奏効者と残存症状や機能障害のある患者に対して、早期治療の開始が有効であることを強調し、寛解を得るための重要な機会はMDDが最初に発症してから6ヵ月以内である7と報告しました。

McIntoshは、臨床経験から、ほとんどの場合、症状を完全に消失させることが初期の目的となります。治療効果が不十分な場合、別の単剤療法に切り替えるか、あるいは併用薬を追加するかになります。

また、McIntoshは、抗うつ薬はそれぞれユニークな特徴を持ち、治療はCANMATなどのガイドラインを参照することができるが8、治療には、患者の意向が一要素となることから常に患者個人のニーズに合わせるべきと強調しました。

さらに現時点において、抗うつ療法の有効性の唯一の指針は、治療反応に基づいて評価されています。 しかしながら、McIntoshは、将来、そのような評価は脳の構造的・機能的マーカーに基づくものになることを期待しています。その例として、大脳辺縁系および前頭葉-線条体ネットワークにおける機能不全を示す結合パターン、右海馬容積の変化、前帯状回の活性などがあげられます9,10

遺伝子発現プロファイルと炎症マーカーにより治療効果が予測でき、いくつかのMDDに役立つ可能性がある

 

今後「~オミックス」による治療へ

ゲノミクスが将来、精神医学での個別化医療に役立つことをMcIntoshは示しました。一例として、遺伝学的な多様性は、視床下部・下垂体・副腎(HPA)伝達経路の機能と抗うつ薬への治療効果に関連していることがわかっています。別の例として、遺伝子発現に影響を与えるエピジェネティックな現象があり、これによりセロトニン神経経路を介し作用する薬剤の有効性に影響を及ぼす可能性もあります。

トランスクリプトミクスとプロテオミクスも重要になっていくと考えられています11。Genome-based Therapeutic Drugs for Depression試験(ゲノム情報に基づくうつ病治療薬試験)において、うつ病治療無反応者では白血球における炎症性サイトカインであるインターロイキン1β、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)およびTNF-αのmRNA発現量がベースラインから高値でした11。また、治療反応率が末梢血のC反応性蛋白(CRP)値と関連する可能性が高いことを示唆する報告もあります12

 

本サテライトシンポジウムはEMEAのJohnson and Johnson社のJanssen Pharmaceutical Companiesの支援を受けて開催されました。 

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. McIntyre R et al J Affect Dis 2014; 156: 1-7
  2. Heerlein K et al. J Affect Disord 2021 Mar 15;283:115-122
  3. Bartova L et al. World J Biol Psychiatry 2019; 20: 427-448
  4. Lépine J-P, Briley M. Neuropsychiatr Dis Treat 2011; 7(Suppl 1): 3-7
  5. Demyttenaere K, Van Duppen Z. Int J Neuropsychopharmacol 2019; 22: 85-92
  6. Jaffe DH et al. BMC Psychiatry 2019; 19(1): 247
  7. Bukh JD et al. J Affect Disord 2013; 145: 42-8
  8. Kennedy SH et al. Can J Psychiatry 2016; 61: 540–56
  9. Drysdale AT et al. Nat Med 2017; 23: 28-38
  10. Fu CHY et al. Neurobiol Dis 2013; 52: 75-83
  11. Cattaneo A et al. Neuropsychopharmacology 2013; 38: 377-85
  12. Chamberlain SR et al. Br J Psychiatry 2019; 214: 11-19 
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