気分障害のバイオマーカーを求めて

気分障害の新規バイオマーカーによって早期診断が可能になり、新たな療法の開発に資する情報を得ることができます。例えば、うつ病には免疫学的バイオマーカーや酸化・窒素化ストレスバイオマーカーがあり、双極性障害の病期診断にはサイトカインや酸化ストレスマーカーがあります。EPA(欧州精神医学会議)2019では、これらの分野における進捗について、専門家から示唆に富む発表が行われました。

うつ病の免疫学的バイオマーカー1

うつ病には慢性の病理学的な炎症誘発性の準備状態が関連しています。

ポーランド・Medical University of LodzのPiotr Galecki教授によると、うつ病患者の免疫系は病理学的な炎症誘発性準備状態にあり、以下が増加しています。

  • 炎症性サイトカイン:腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン(IL)1β、IL-6、インターフェロンγ(IFN-γ)など。
  • 急性期タンパク質:主に、C反応性タンパク質、α1酸性糖タンパク質、α-キモトリプシン、ハプトグロビン、α1-マクログロブリン、α2-マクログロブリン。
  • プロスタグランジン(PG)E2の増加によって誘発される補体成分C3及びC4
  • ネオプテリン(炎症指標)
  • T細胞のCD4/CD8比

一方、急性期タンパク質(アルブミン及びトランスフェリン)、IL-10及びIL-12は減少しています。

Galecki教授によると、炎症プロセスに関与する酵素、例えば、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、ミエロペルオキシダーゼ、誘導型一酸化窒素合成酵素などが反復性うつ病性障害の病態生理に関与しています。これらの酵素は、フリーラジカル、損傷タンパク質、脂肪酸、細胞DNAも生成しています。

うつ病の酸化・窒素化ストレスバイオマーカー2

Galecki教授によると、酸化促進プロセスもうつ病の病態生理に関与しており、以下の状態を起こします。

  • 脂質過酸化反応、活性酸素種(ROS)(スーパーオキシド、過酸化水素)及び反応性窒素種の増加
  • 抗酸化酵素(ジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、還元酵素)の活性低下

酸化促進物質と抗酸化物質の均衡異常を示すうつ病バイオマーカーには、以下のようなものもあります。

  • 総グルタチオン、尿酸、アスコルビン酸及びグルタチオン・ペルオキシダーゼの減少
  • マロンジアルデヒド(MDA)、8-ヒドロキシデオキシグアノシン、亜硝酸及び硝酸エステルの増加
  • フリーラジカルの過剰生成

キヌレニン経路の活性化がトリプトファンの枯渇を引き起こします

Galecki教授によると、うつ病発症の病態生理学的メカニズムには以下の誘発因子が介在しています。

  • IFN-γ、PGE2、IL-6及びIL-1βに反応するインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、及び
  • 心理的なストレス、グルココルチコイド又はトリプトファンに反応するトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)

IDO及びTDOはいずれもキヌレニン経路を活性化させ、トリプトファンの枯渇を引き起こします3

双極性障害の病期診断バイオマーカー 

アロスタシスにより負の経験が徐々に蓄積します

ポーランドのクラクフにあるJagiellonian University Medical CollegeのMarcin Siwek教授は、双極性障害(BPD)はアロスタティック負荷の典型例であると述べています。Siwek教授の説明によると、アロスタシスとは、長期にわたり徐々に負の経験が蓄積しても生命を維持できるよう、病原因子に対する反応として生体が新たな均衡を取り戻し維持する能力です4。 これに伴う反応として酸化ストレスが発生し、その結果又は影響として窒素化ストレス、炎症、神経変性及び神経毒性が生じます。

Siwek教授によると、BPDの病期診断は、BPDの臨床的及び生物学的な進行を詳細に示す統合モデルであり5双極性障害が病態生理学的プロセスの蓄積によって難治性で日常生活に支障をきたす疾患として徐々に重度化する疾患であることを示唆しています。

TBARS増加は、I期及びII期のうつ病、III期及びIV期の寛解との関連性が認められています

Siwek教授によると、数多くのバイオマーカーがチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)を始めとする酸化ストレスに関連しており6、BPDにおける酸化ストレスを反映する現象として、TBARSの増加が最も頻繁かつ強力に認められる現象であると指摘しています。BPDの各病期におけるバイオマーカーの変化については、現在、以下のような知見が得られています。

  • TBARSの増加は、I期及びII期のうつ病、III期及びIV期では寛解とそれぞれ関連性があります7
  • TBARSの正常化は、I期及びII期の寛解と関連性があります7
  • 亜鉛の減少は、III期及びIV期のうつ病と関連性があります8

Siwek教授は、今後、データを統合することで臨床的に有用な一連のBPDバイオマーカーが生まれる可能性があり、免疫学的バイオマーカー、神経心理学的バイオマーカー、神経画像バイオマーカー及び遺伝バイオマーカーを関連づける必要性も強調しています。

精神医学におけるバイオマーカーに関する詳細は、https://japan.progress.im/ja/node/5001をご覧ください。

Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.

参考文献
  1. Miller A, Raison C. Nat Rev Immunol. 2016;16(1):22–34.
  2. Maes M, et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psych. 2011;35(3):676–92.
  3. Maes M, et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psych. 2011;35(3):702–21.
  4. Vieta E, et al. Eur Psych. 2013;28(1):21–9.
  5. Kapczinski F, et al. Expert Rev Neurother. 2009;9(7):957–66.
  6. Siwek M, et al. Pharmacol Rep. 2013;65:1558–71.
  7. Siwek M, et al. Neuropsychobiology. 2016;73(2):116-22.
  8. Siwek M, et al. J Affect Disord. 2016;190:272-277.
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