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Progress in Mind
世界精神医学会議2021(WCP 2021、2021年10月18~21日、バーチャル開催)で示された新たなデータから、家族の機能不全及び免疫の調節異常が、精神障害者の全死亡の相対リスクが非精神障害者の2倍以上である理由を一部説明し得ることが分かりました。
幼少期の逆境的体験、気分障害及び併存疾患の間における関連性
複数の幼少期の逆境的体験は、様々な心身の健康状態及び早死の重要なリスクファクターのひとつである
「精神障害者の全死亡の相対リスクは、非精神障害者より2.22倍高く、一般的な精神障害者は10年以内に死亡に至る可能性があります1」とJosé Oliveira医師(Lisbon, Portugal)は述べています。このうちの3分の2は心疾患等の自然死であり、17.5%は自死を含む自然死以外の原因によるものでした1。
Oliveira医師の説明によると、精神疾患と致命的な併存疾患を結び付ける既知のリスク因子として、喫煙、運動不足、飲酒、不健康な食事や医療アクセスの困難が伴う心理社会的剥奪などがある、と述べています2。
Oliveira医師はさらに、複数の幼少期の逆境的体験[身体的及び心理的虐待、性的虐待、育児放棄及び育児怠慢、並びに小児の商用又はその他利己的な目的での搾取行為として、世界保健機関(WHO)により定義3]は、様々な心身の健康状態、ひいては早期死亡の重要なリスクファクターでもある、4と付け加えました。
炎症性疾患が、幼少期の逆境的体験と気分障害及び一般的な疾患の間の関係性のメディエーターとなる可能性があるか?
幼少期の逆境的体験は、糖尿病、肥満及び精神障害に関連しており、炎症性疾患がこの関係性のメディエーターとなる可能性があると考えられています5。
幼少期の逆境的体験が心身の併存症リスクを増大させるか
幼少期の逆境的体験が、気分障害及び一般的な疾患のいずれかのリスクを個別に増大させるのではなく、併発のリスクを増大させる可能性があるかどうかを解明するため、Oliveira医師らは、WHO世界精神保健調査(ポルトガル調査)で2060人の成人を対象に研究を行いました6。
幼少期の逆境的体験は、家族の機能不全又はその他の幼少期の逆境的体験のいずれかに分類することができる
Oliveira医師らは、幼少期の逆境的体験は複数が同時に起こることが最も多く、以下の各項目間に最大の相関関係があることが確認されました。
「解析により、幼少期の逆境的体験は、以下の2つのカテゴリにおいて、一般的疾患との関連が異なっていることが明らかになりました。」とOliveira医師は説明しています。
家族の機能不全、成人期の気分障害及び関節炎の間に認められた有意な関連性
「その結果、家族の機能不全は、成人期の気分障害、高血圧、関節炎及び季節性アレルギーの発症に共通する要因であり、以下各項目間に有意な関連性が認められると、Oliveira医師は述べました。
この関連性が予想以上なのかどうかを確認するため更に検討したところ、家族の機能不全が気分障害及び関節炎の併発に関する特定のリスクファクターになる可能性があることが明らかとなりました(気分障害:χ2=3.15、p=0.08;関節炎:χ2=6.47、p=0.01;離散時間生存分析、カイ二乗検定)。
家族機能不良は、免疫の調節異常につながる気分障害及び関節炎の両方に共通する経路の脆弱性のトリガーとなる可能性がある
関節炎の多くの症例で、炎症性バイオマーカーに伴い炎症性関節炎が認められ、幼少期の逆境的体験は、成人期の炎症性バイオマーカーに関連しているということが示されています(統計データは本文末に別途記載)7,*a 。
その結果、家族の機能不全は、免疫の調節異常につながる気分障害及び関節炎の両方に共通する経路の脆弱性のトリガーとなる可能性がある、と Oliveira医師らは考えています。
注釈
*a
mean r (95% CI): CRP = 0.2507 (0.0854-0.4159), p = 0.0030, n = 13,374; IL-1β = 0.3169 (0.0269-0.6070), p = 0.0322, n = 304; IL-6 = 0.3029 (0.1974-0.4084), p < 0.0001, n = 7,295; TNF-α = 0.2998 (0.0310-0.5687), p = 0.0288, n = 1,899。
Our correspondent’s highlights from the symposium are meant as a fair representation of the scientific content presented. The views and opinions expressed on this page do not necessarily reflect those of Lundbeck.